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「」に対する検索結果が34件見つかりました

  • 中世ヨーロッパの生活呪文 | games

    中世ヨーロッパの生活呪文 FT書房のメールマガジン「FT新聞」に2022年7月~12月、増補改訂版が2024年8月~11月に連載されました。 こちらには、増補改訂版をFT書房の許諾の元、掲載しています。 FT書房・保管庫 メールマガジン「FT新聞」の登録 第1回「中世イングランドの呪文詩」 領主エドリックは貴重な家畜の牛の消失に悩まされていた。 そこで不思議な呪文詩を使う医師(リーチ)を頼るが… 解説パートでは、10世紀イングランドと呪文詩を解説 第2回「いなくなった牛を探す呪文詩」 村の広間で牛を探す呪文詩を発動させた医師(リーチ)の ハードウルフとエドリック。果たして… 解説パートでは、牛を探す呪文詩と詩に登場する人物を解説 第3回「体を癒す呪文詩」 小屋の焼け跡に横たわる謎の人物。そのそばでエドリックが見つけたものとは? 解説パートでは、中世の現場検証と様々な病魔に対抗する呪文詩を紹介 第4回「九つの薬草の呪文詩」 瀕死のダーシーを癒すため、ハードウルフは薬草の力を呼び覚ます! 解説パートでは、九つの薬草の呪文詩の解説から、呪文の構造や技法を解説 第5回「旅立ちの呪文詩」 真相を確かめるためにブラートンへの旅支度を進めるエドリックのもとにハードウルフが旅の呪文詩を伴ってやってきます! 解説パートでは、呪文詩と中世の旅についても解説 第6回「蜂の群れへの呪文詩」 ついに真実にたどり着くエドリック達、しかしそこには危険が待ち受けていた! 解説パートでは、中世の養蜂について解説 第7回「回復の呪文」 領主エドリックがもたらした真実と誇り。 ハマートンが迎える新しい世界とは?! 解説パートでは、地力を回復する呪文のほか、当時のイングランドの農業、法制度、その後の趨勢などについて解説

  • ペスカトーレはネコの島ダウンロードコンテンツ

    ペスカトーレはネコの島 ダウンロードコンテンツ ◆ オンラインセッション用マップ  朝、昼、夜、各シーン用に用意しました。  シーンにあわせマップを切り替えてお使い下さい。サマリーが不要であれば朝のマップだけでも十分にセッション可能です。 *画像クリックでフルサイズダウンロード 朝マップ 昼マップ 夜マップ

  • 天蕎麦工房-TENSOBA WORKSHOP

    更新情報 2016/06/06 開設 2016/06/17 コンテンツ更新 2016/06/25 1ページTRPG温泉TRPG追加 2018/10/28 1ページTRPGコンテスト出品作品情報追加

  • プレイエイド:ショコラティエは名探偵? | games

    ショコラティエは名探偵 ゲームマスタープレイエイド ◆依頼人と思い人の設定  ゲームの準備の依頼人と思い人の設定は、参加者のリクエストを聞いたり相談しながら決めても楽しく円滑に遊べると思います。 ◆好み調査フェイズ  好み調査フェイズは情景描写、行動描写を必要とするので少々難しいかもしれません。  状況の詳しい説明が浮かばない場合、サイコロで出た状況を読み上げそのままサイコロをふらせてヒントワードを獲得したか判定してゲームを進めても大丈夫です。 ◆ヒントワード:甘さレベルの伝え方  甘口ならば別の甘いものが好き(例えばマシュマロ、コーヒーに砂糖山盛り)。  辛口ならば苦いもの好き(例えばコーヒーはブラック、ゴーヤ・ピーマン生噛り)。

  • ショコラティエは名探偵?

     北方にあるとある街では、年に1度だけ「思い人」にチョコレートをこっそり調べて贈り驚かせる習慣があります。そして調べ方が分からない人達が向かうのが「ショコラティエ探偵ギルドです!  皆さんはショコラティエ(チョコレート職人)探偵になり、「思い人」の好みを調査しそれに合ったチョコを作ります! 聞き込みや尾行等で調べ、皆でチョコを作り見事「思い人」を驚かすことが出来るでしょうか?! ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー1~4名 ◆必要な物  六面のサイコロ1つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  協同・ミッションクリア型 ◆推定所要時間  1~2時間(オフライン想定) プレイエイド ショコラティエは名探偵? 画像クリックでダウンロード

  • 村のはずれの魔女さん家 | games

     とある村のはずれの大きな木に、魔女さん家がありました。 中世風の異世界ブリオージュで新人魔女さん達が村のみんなのなやみを解決しようとかけまわり、そして家を大きくして魔法を極めていく成長物語です! ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー1~4名(ソロプレイ可) ◆必要な物  六面のサイコロ2つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  協力・クエスト解決型 ◆推定所要時間  30分~2時間(オフライン想定) 村のはずれの魔女さん家 画像クリックでダウンロード

  • 第6回「蜂の群れへの呪文詩」 | games

    ━━━━━━━━━━━━━━━━■□■中世ヨーロッパの生活呪文 (増補改訂版) 第6回 「蜂の群れへの呪文詩」  テンプラソバ ━━━━━━━━━━━━━━━━■□■  ◇はじめに  おはようございます!  中世ヨーロッパと西洋風ファンタジーが大好きなテンプラソバです。  中世ヨーロッパの生活に密着した呪文についてのコラムの第6回「蜂の群れへの呪文詩」です。  紹介する呪文は、中世に書かれた医学書などに記載され現代まで伝わるもので、フィクションではなく実際に使われていた可能性が高い、ある意味「本物」の呪文です!  舞台は、前回に続いて中世前半のイングランドのとある田舎の村です。  今回は、蜂の群れに関する呪文を紹介しましょう! ※注意  呪文や歴史背景などに関する内容は参考文献を元に書いています。  参考文献は記事の最後をご覧ください。  ドラマパートは私が創作したフィクションです。 ■ドラマパート前回のあらすじ  自領民のメイソンが起こした一連の事件。  一連の事件の背後に、隣領地の領主ブラー家による工作の可能性がある!  そう感じた、領主エドリックは自らブラー家領地のブラートンに向かう。  エドリックの家族は罠があると警告し必死に止めようとするが、エドリックの決意は固い。  ハードウルフは、旅立つエドリックを旅の呪文で祝福するのだった。 ■登場人物 エドリック・ハマー ハマートンの領主、身重の妻がいる ロドルフ・ハマー エドリックの父。言うべき時は言う性格 ハードウルフ ハマートンの司祭でリーチ(医師)、呪文詩を駆使する エグビン ハマー家の家人、エドリックが頼りにする男 エリク デーン人(ヴァイキング)で、ハマー家の警備担当 フレッチャー ハマー家の警備担当。普段はエリクに鍛えられている メイソン ハマートンで牛泥棒や風説の流布など良からぬ事を企んだ者 ◆「ブラートン」 ■道行き  エドリック達は、ハマートンとブラートンの境の目印となる石を超えて進む。  エドリックの乗る馬は名をスノターという。  古い英語で「賢さ」を意味し、その名の通り主人のいう事をよく聞き機転も利く馬だ。  国境を超えてから乗り手のエドリックの心臓の鼓動が早まるのを、スノターも敏感に感じいつのまにか速足になってきた。  ふとエドリックは、ついて来ているはずの家人達の足音が聞こえなくなった事に気づいた。  これではよくないとエドリックはかぶりをふり、一度深く深呼吸をした。  そのあとで、スノターの首筋を易しくたたいて撫でると、嬉しそうに鼻を鳴らして速度を落とした。  ゆっくり歩くスノターに、小走りしていた後方の武装した家人3人が息をきらしつつ追い付く。 「良かった!まさかエドリック様お一人で行かれるのかと思いましたよ」  息を整えながら言うのはエグビンだ。  彼はエドリックの身の回りの世話や様々な雑用を引き受ける有能な家人だ。  エドリックの武芸の稽古にもよく付き合い、投げナイフの腕はエドリック以上だ。  何かと器用なため、エドリックも頼りにしている。 「もう年なんだから勘弁してくれよ! お館(やかた)さまよ!」  この文句はエリクのものだ。  長髪で片目がない元ヴァイキングだ。  先の戦乱で捕虜にされ処刑される所を、エドリックの父ロドルフが剣の腕を惜しんで引き取ったのだ。  ハマー家の暮らしが気に入ったのか反抗も脱走しようともせず、館の守衛の一人として長年仕えてきた。  壮年だが、剣の冴えはまだまだ衰えない。  今回は、ロドルフたっての願いでエドリックに同行したのだ。 「この程度で息があがるなんて、エリクさんいよいよ歳なんじゃないんですか?」  そう軽口をたたくのはフレッチャーという名の若者だ。  館の守衛の一人で、いつもエリクに鍛えられている。  若者らしく喧嘩早い部分もあるが、主の命令をよく聞くいい男だ。 「俺の気が急いているのを、スノターが感じたらしくてな。すまなかった!」  エドリックは皆にそう言って、指にはめられた金の指輪を別の手でなぞる。  指輪は、ハードウルフ特製の「守りの指輪」で魔術を込めた文字が刻まれている。  他に、薬草をいくつかエグビンが携帯している。  出発前に、ハードウルフがエグビンに何やら長めに話していた様子から、きっと薬草の説明を受けていたのだろうとエドリックは考える。  やがて道の向こうに森が見えてきた。  森に続くはっきりとした道路はないものの、獣や人が通って自然にできた道がいくつかある。  エドリックは、ロドルフより聞いた道順を頼りにそのうちの一つを進んだ。 ■待ち伏せ  森に入ると、少し薄暗くなった。  あちこちに蜘蛛の巣がかかり、上空ではなにかブンブンとうなる音が聞こえる。  藪や低い樹が多く、あちこちに枝が張り出して馬では移動しづらいため、エドリックは馬を降りた。  やがて、藪を抜けると木立の間に大きな空間があった。  そして、その中央には火を囲んで座っている一団がいた。  皆一様に鎖帷子や革鎧を着込んでおり、槍や斧を手元に置いて何やら危ない雰囲気だ。  ひときわ大柄な男がエドリック達を見ると、待ってましたというしたりが顔で行く手を塞ぐように立ちはだかり言った。 「おーっと、旦那さん達、通行料をもらおうか? 身ぐるみ全部をな」  座ってた男たちがゲラゲラと笑う。  野盗だろうか?  それにしては皆鍛えられ、武装も揃っている。  エドリックが観察していると、ある事に気づく。  フードを目深に被った男がこそこそ話をしていたが、鼻の形はどうみてもメイソンなのだ。  エドリックはフードの男に聞こえるよう大きな声で呼びかける。 「メイソン! お前、ついに野盗になったのか?」  とフードの男がうわずった声で返答する 「メメメ…メイソンだって?い、い、いったい誰だ?!誰の事だ?」  声でメイソンとまるわかりだ。 「声がまんまメイソンじゃないか!おい!」  エリクがそういって怒鳴りつける。  フードの男がたじろぎ、地面にしりもちをつくとフードがめくれた。  そこから、メイソンの顔が出てきた。  メイソンの怖気づいた顔は、次第にニヤニヤ笑いに変わり、こう述べた。 「そうですね。旦那方は、ここで強盗に合い、お亡くなりになるのですよ」  エドリックは、腰の剣の束に手をかけつつ、武装した男達に問いかけた。 「その一式揃った武装、鍛えられた体を見るに、ブラー家の関係者と見た。いかに?」  大柄の男は、腰に手をあてたまま渋い顔で溜息を一つつくと、両手のひらを上向きに上げるしぐさをした後に仲間に視線を向ける。  そして、腰の剣を抜きながらこう告げた。 「ハマートンで牛がなくなったり火事が起きたりと治安が乱れ、さらに領主が強盗に倒される。  ハマー家にハマートンの統治能力なしとして、わがブラーが裁判に訴えそちらの土地も管理する。  まあそういう手はずなんです」  座っていた男達も、ぎらつく目線をしつつ周囲に展開しそれぞれ武器を構えた。  エドリックも武器を抜くと、矢がエドリックの足下に刺さる。  どうやら樹上に射手がいるようだ。それも複数人。  大柄の男が口元だけ笑顔で言う。 「ブラー家はぬかりがないんです」 その時背後にいたエグビンが、小声で何か唱え始めた。  「我はそれを足の下に捕らえ、   我はそれを見つける。   聞け、この土はあらゆる生物に対して有効であり   そして、その相手にも、手入れの行き届かないところにも   そして、人間の舌の偉大さに対して」*1  メイソンは気づき、襲撃者達に「あれ」をやめさせろと言う。  襲撃者達は「末期の祈りぐらいさせてやれ」と取り合わない。  エグビンは詠唱を続ける。  「とどまれ!勝利の女神よ、大地に沈め!   あなたは決して森に飛ばないだろう   わが善良さに心を寄せよ   すべての人が食物と   その家のためにそうであるように」*1  エグビンはそう言って、土くれを右手でつかみ樹上に向けて投げばらまく。  メイソンが、「あれはそう言うのじゃないんだ」と叫んだ刹那、  森の入り口から不気味なうなり声が聞こえてきた。 ■脱出  ワーンと激しくうなるその音は、春先に時々聞かれる蜂の大群の音だ。  蜂の大群は、土くれが投げられた樹上めがけて殺到していく。  すると、射手の悲鳴が聞こえ、すべって地面に落ちてきた。  襲撃者達がぽかんとしている隙に、エリクは雄たけびをあげ斧をふるいだした。  フレッチャーも槍を振り回し、かく乱する。  エドリックも剣を構えて戦おうとする。  「旦那さま!ここはお引きください…我々が活路を開きます!」    剣を構えたエドリックの耳元でエグビンがささやく。  「私一人だけ逃げ帰ると思うか!?」  熱した眼でそう言い切るエドリックを、エグビンが諭す。  「逃げるのではありません…!ブラー家の意図をつかんだ以上、旦那さまには次の手を打っていただく必要があります。今は、引く時です…!」  エグビンに促され、やや冷静になれたエドリックはスノターに乗り駆け出す。  来た道を走って戻ろうというのだ。  金属と金属が重くぶつかる音、肉を切り裂く音が森の中にこだまする。  襲撃者の数の多くは、エリクとフレッチャーの活躍もありだいぶ減ったように見える。   しかし、ブラー家のたくらみを話した大男と、他5人ほどがエドリックを追撃するのを、防ぐことはできなかった。  襲撃者達はエドリックを追いかける。  森を抜けた所で追い付かれたエグビンとエドリックは、大木を背に襲撃者と対峙する。  そして傷だらけになりながらも善戦していたが形勢不利になりつつあった。  その時スノターが今までにない大声でいななき、エドリックに背後から襲いかかろうとしていた者を、力強い後ろ脚で蹴り上げた。  その隙に離脱しようと、エドリックは駆けだす。  しかし、肩に激痛が!  かすむ目で肩を見ると、そこには投げ槍が貫通していた。  振り返ると、大男が戦斧を振り上げ、今まさにこちらにとどめを刺そうとしている。 「ご領主どの…お覚悟を!!」 「これまでか」  エドリックがそう思った刹那、目の前が巨大なまばゆい光で包まれた。 ~次回へ続く~ *1 呪文詩は、”Old English Poetry in Facsimile”掲載の現代英語翻版を、著者自ら日本語に翻訳しました ◆解説編 ■エグビンが唱えたもの  エグビンが、樹上に隠れた射手を襲わせるのに利用した蜂の呪文詩。  詩の内容は、投げた土くれの場所に定着させるような内容となっています。  今回は敵射手を襲わせ時間を稼ぐ戦法に使われましたが、本来は蜜蜂の群れを自分たちが望むところに定着させ巣を作らせようとする、生産のための呪文詩です。  なぜ、蜂の群れを定着させることが呪文詩になっているかについて説明するために、まずは中世の蜂蜜や養蜂について説明いたしましょう。 ■中世の蜂蜜  精製された砂糖が無かったこの時代に、ほぼ唯一の甘味である蜂蜜はとても貴重でした。蜂蜜は、麦や家畜と並んで王への献上品リストに含まれます。  そして蜂蜜は甘味としてだけでなく、蜂蜜酒の原料としても重宝されていました。  また蜜蜂の巣からは蜜蝋を生産する事もでき、蜜蝋からは明かりとなるロウソクを生産していました。当時、養蜂はとても重要な産業でした。  蜂と人間の関係は、蜂蜜などの物質の採取に限りません。  起源や時期は明らかではないのですが、養蜂家は家族の冠婚葬祭について蜂に報告したり、食べ物を与え巣を飾る習慣があるようです。  そうしないと、良くない事が起きるという言い伝えがあったためです。  2022年にイギリスの女王エリザベス2世が崩御された際も、王立養蜂家が蜂に女王の崩御と新王の就任を報告したというニュースがありました。  唯一無二の甘味「蜂蜜」をもたらす蜂と人との間には、昔から不思議なつながりがあるのかもしれません。 ■中世の養蜂  現代の養蜂では、箱型の巣箱を使いそこからスリット状のパーツを引き出す事で蜂蜜や蜜蝋を効率的に採取できるようになっています。この箱型の巣箱はラングストロス巣箱と呼ばれ19世紀頃に作られたものです。  それ以前の中世以来の長い期間は、大きな円錐形またはドーム状の藁で編み込んだ巣に蜂を住まわせ、蜂蜜や蜜蝋を採取していたようです。  蜂蜜を採取する時の作業着は、時代によって異なるようです。最近SNS界隈でみかける「中世の養蜂家」スタイルがあります。全身を包む白いローブと顔面にさしこまれた渦巻き模様のザルという異様な防護服のことです。こちらは少なくとも中世末期または16世紀頃に描かれた絵画に登場する比較的「新しい」防護服となります。  それ以前の中世初期から盛期までは、顔にネットをかけ全身をチュニックで覆ったり、厚手の頭巾や帽子をかぶり頭を防御しつつ体には厚手の服を着るというスタイルが一般的だったようです。中世末期の14世紀頃にはマントで頭を覆ったり、網目状のフェイスガードをつけた様子が見られるようになります。  養蜂を描いた中世の絵画には、しばしば経験の浅い養蜂家を罰するため蜂が刺すといった様子が描かれています。当時の苦労がしのばれますね。  苦労と言えば、養蜂家にとって最大の苦労とは「分蜂」と考えられます。  分蜂とは、いわば「蜂の群れの引っ越し」を指します。蜜蜂の習性として、新しい女王蜂が産まれると、以前からいた女王蜂は一族を率いて新天地に旅立ちます。  現代でも春先に移動中の蜜蜂の群れが電信柱などに群がっている様子が見られるようですが、これらも分蜂と考えられます。  蜜蜂は、家畜のように柵に囲ったり、縄をつけるわけにいかず、「所有権」や「飼い主」といった概念は人間が勝手につけたものであり蜜蜂達は勿論認識できていません。  この分蜂は、現代でも悩みの種のようですが、中世ではより深刻でした。  分蜂に関わる当時の法律もあり、旅立った蜂の群れの所有権を主張するには、ひたすら追いかけるしかありませんでした。この分蜂の悩みこそが、今回紹介する蜂の呪文詩にも反映されているのです。 ■蜜蜂を土に定着させる呪文詩  この蜂の呪文詩と非常に似た内容の呪文がドイツにあります。ドイツのロルシュ修道院の写本に描かれた「ロルシュの蜜蜂の祝福」と呼ばれるものです。  呪文の内容は、蜂の呪文詩と非常に似た内容です。蜜蜂に対してひたすらここに留まり、他に移動しないように祈り懇願する内容となっています。  中世の修道院での養蜂も盛んにおこなわれており、蜜蜂をとどまらせる呪文は修道士たちによって好まれて使われていたようです。  今回紹介した、蜂の呪文詩も豊かな恵みをもたらす蜜蜂達をできるだけ自分の農場に留めたいという当時の人たちの祈りが込められているように思われます。 ■アングロサクソン時代の軍人  10世紀までのアングロサクソンの王国は、ブリテン島東部を支配しているデーン人達と激しく戦い続けていました。  そのため、王に仕え兵役の義務がある下級貴族の従士「セイン」や自由農民などから構成される一般兵の「フュルド」によって軍が組織され、砦を防衛したり戦いに駆り出されていたようです。  しかし、10世紀後半になると戦いも徐々に鎮静化し「平和」な時代が到来します。  その頃には「フュルド」も形骸化していたと考えられています。 ■アングロサクソン時代の馬  当時、ブリテン島にいた馬は、現在のアラブ種にくらべて小柄だったと考えられています。  ブリテン島の馬は、9世紀には蹄鉄も付けられ、より効率的に走れるようになりました。  馬は牛よりも、育成に手間がかかります。  そのため、農作業は牛が活躍し、戦争では歩兵中心の戦闘だったようです。  盾をもつ歩兵達が密集して盾の壁を形成しぶつかり合う戦法が多かったとのことです。  騎馬による戦いは主体ではなかったと考えられています。 ◇次回予告  ブラートンの手勢に襲撃され追い詰められたエドリック。  果たして生き残れるのか?!  ハマートンの明日はどうなるのか?!  中世ヨーロッパの生活呪文 第7回「回復の呪文」  ご期待ください!  ◆参考文献 ”Old English Poetry in Facsimile”,Martin Foys, University of Wisconsin-Madison https://oepoetryfacsimile.org/ ※中世初期イギリスの詩を収集しオープンで共有するオンラインプロジェクト 唐沢 一友 (著)アングロ・サクソン文学史:韻文編 (横浜市立大学叢書―シーガルブックス, 東信社, 2004年)  唐沢 一友 (著)アングロ・サクソン文学史:散文編 (横浜市立大学叢書―シーガルブックス, 東信社, 2008年)  吉見昭徳(著)古英語詩を読む ~ルーン詩からベーオウルフへ~(春風社,2008年) ウェンディ・デイヴィス/編 鶴島博和/監訳 オックスフォード ブリテン諸島の歴史 3 ヴァイキングからノルマン人へ (慶應義塾大学出版会,2015年) イギリス王室の養蜂家が女王の崩御をミツバチに報告するための伝統的な儀式を執り行う https://gigazine.net/news/20220912-royal-beekeeper-informed-bee/ ハチに家族の重大ニュースを話して伝える中世ヨーロッパの奇習 https://nazology.net/archives/40987 The Anglo-Saxon Fyrd 878-1066 AD https://regia.org/research/warfare/fyrd2.htm ※9世紀-10世紀のフュルドについてまとめられた記事 Anglo-Saxon Warriors: From Thegns to Fyrd https://www.thecollector.com/anglo-saxon-warriors-thegns-to-fyrd/ ※ブリテン島入植からノルマンコンクエストまでのアングロサクソンの軍制についてまとめられた記事 Anglo Saxons and Their Horses https://englishhistoryauthors.blogspot.com/2015/11/anglo-saxons-and-their-horses.html ※アングロサクソン時代の馬に関する記事 Medieval beekeeping https://livebeekeeping.com/history-of-beekeeping/beekeeping-middle-ages/ ※中世の養蜂について詳しくかかれた記事 Medieval beekeepers: style, clothing, implements (mid-11th–mid-15th century) https://www.academia.edu/38230394/Medieval_beekeepers_style_clothing_implements_mid_11th_mid_15th_century_Ethnoentomology_3_2019_1_15 ※中世の養蜂における作業内容、巣箱や作業着についての論文。豊富な当時の挿絵を元に分析をしている。 alimenti, miele, Taccuino Sanitatis, Casanatense 4182 https://en.wikipedia.org/wiki/File:27-alimenti,_miele,_Taccuino_Sanitatis,_Casanatense_4182..jpg 「健康全書」"Taccuino Sanitatis"と呼ばれる中世の健康書に描かれた養蜂用に作られた蜂の巣。ドーム型の独特な形状を持つ。 Pieter Bruegel the Elder - The Beekeepers and the Birdnester https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pieter_Bruegel_the_Elder_-_The_Beekeepers_and_the_Birdnester_-_WGA03528.jpg ※独特な渦巻きに編み込んだザルのような円盤を顔面にかぶせる独特なフェイスガードをもつ養蜂家の防護服を描いた16世紀の絵画のリンク。民衆の日常風景を描いた事で有名なピーター・ブリューゲルの父が描いた絵です。

  • ペスカトーレはネコの島

     漁師と不思議な猫が共存するペスカトーレ島。皆それぞれ島の漁師料理の主になり助手を従え漁師料理でどれだけ稼げるか競います。    料理は1日に2種類。昼に人間用、夜に不思議なネコ用のを作ります。朝の漁や市場で材料をそろえ、店で仕込みや仕上げをしてピザ、パスタ、リゾット等地中海風の様々な漁師料理を作ります。  でもご用心!ネコが食べてはいけない料理を出すと・・・?! ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー2~6名(1名でも可) ◆必要な物  六面のサイコロ2つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  競争・ポイント集め型 ◆推定所要時間  1~3時間(オフライン想定) プレイエイド ダウンロードコンテンツ ペスカトーレはネコの島 画像クリックでダウンロード

  • 天ぷらそばTRPG

     それぞれそば職人となり、サイコロの目で決まるそばや食材から最高においしい天ぷらそばをつくりましょう!  サイコロの出目によって、盛りそばかかけそばか、具は天ぷらかかきかげか、そば麺や出汁の種類、そして天ぷらのタネ、薬味が決定し、あとはそば職人がいかにおいしそうに皆に紹介するかにかかってます。  ツイッターで大人気の1ページTRPG「うどんTRPG」(のす様作)を基本に題材を天ぷらそばに変えたリスペクト作品となってます。 ◆プレイ人数  参加者3~6人推奨(独り遊びも可) ◆必要な物  六面のサイコロ2つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  競争・ポイント集め型 ◆推定所要時間  30分(オフライン想定) 天ぷらそばTRPG 画像クリックでダウンロード

  • 天蕎麦工房作1ページTRPG総合案内

    1ページTRPG 総合案内  ここでは自作の1ページTRPGについて簡単に紹介しています。各TRPGのタイトル画像をタップすれば詳細なページに移動します。  2015年12月30日より、現在までいくつか1ページTRPGをツイッターに#1ページTRPGのハッシュタグで投稿し、様々な方々に遊んで頂いています。  2017年創刊の『GMマガジン vol.1』誌上で開催された「1ページTRPGコンテスト」応募作品はこちらを参照してください。 コンテスト ブリオージュシリーズ  中世ヨーロッパ風の異世界「ブリオージュ」。  ここにはパンにうるさい王様や、チョコ探偵、料理をねだる人語を話すネコ達など不思議がいっぱいの世界。    この世界の食をテーマに四作品作成しました。  ブリオージュ世界について詳しくはこちらまで →   尚、世界設定はあくまで参照程度なので、どうぞご自由に自分の身近な世界やキャラ等に変換して遊んでくださいませ! ブリオージュ  パン職人になり王様とお客様をうならせるパンのフルコースを作りましょう!ランダムに集まる食材を加工し、下ごしらえをして焼き上げて素敵なパンを完成させて下さい。 ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー1~4名 ◆必要な物  六面のサイコロ1つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  協同・ミッションクリア型 ◆推定所要時間  1~3時間(オフライン想定)  「ブーランジェリは大忙し」改訂版です!  パン職人になりより充実した食材を集め、加工し、生地を仕込んで、焼き上げて王様とお客様をうならせる「パンの晩餐」を作りましょう!より遊びやすく、各特技を活躍させやすくなりました! ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー1~4名 ◆必要な物  六面のサイコロ1つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  協同・ミッションクリア型 ◆推定所要時間  1~3時間(オフライン想定)  舞台は、年に1度だけ「思い人」にチョコを贈る習慣があるとある街。依頼人に代わってのショコラティエ(チョコレート職人)探偵になって「思い人」の好みを調査しそれに合ったチョコを作りましょう! ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー1~4名 ◆必要な物  六面のサイコロ1つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  協同・ミッションクリア型 ◆推定所要時間  1~2時間(オフライン想定)  漁師と不思議な猫が共存するペスカトーレ島。皆それぞれ料理店長になり漁師料理でどれだけ稼げるか競います。漁や市場で食材を集め人と猫の味覚を満足させられるでしょうか?! ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー2~6名(1名でも可) ◆必要な物  六面のサイコロ2つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  競争・ポイント集め型 ◆推定所要時間  1~3時間(オフライン想定)  年に一度の人魚達と人間たちの祭「人魚祭」がひらかれるヴィーノ王国。人魚達には楽しみにしている「サングリア」を誰が一番おいしく作れるか競いましょう! ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー1~4名(ソロプレイ可) ◆必要な物  六面のサイコロ2つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  競争・評価型 ◆推定所要時間  30分~1時間(オフライン想定)  とある村のはずれの大きな木に、魔女さん家がありました。 中世風の異世界ブリオージュで新人魔女さん達が村のみんなのなやみを解決しようとかけまわり、そして家を大きくして魔法を極めていく成長物語です! ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー1~4名(ソロプレイ可) ◆必要な物  六面のサイコロ2つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  協力・クエスト解決型 ◆推定所要時間  30分~2時間(オフライン想定) その他の作品 それぞれ蕎麦職人となり、サイコロの目で決まるそばや食材から最高においしい天ぷらそばをつくりましょう!  ツイッターで大人気の1ページTRPG「うどんTRPG」(のす様作)を基本に題材を天ぷらそばに変えたリスペクト作品です。 ◆プレイ人数  参加者3~6人推奨(独り遊びも可) ◆必要な物  六面のサイコロ2つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  競争・評価型 ◆推定所要時間  30分(オフライン想定)  現代社会に疲れた人になって温泉でいやされましょう!  サイコロの出目によって、どんな宿に泊まるか、どんな温泉に入れるのか、温泉卓球やマッサージ、温泉街での様々なイベントなどあなた達だけの温泉旅を演出して楽しんでください。 ◆プレイ人数  参加者1~6人推奨(ソロプレイ可) ◆必要な物  六面のサイコロ1~3個、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  箱庭・イベント遭遇型 ◆推定所要時間  30分~1時間(オフライン想定)  TRPGで熊本県を観光しよう!  サイコロの出目によって観光地や温泉、グルメなど決まります。あなた達だけの観光の旅を演出して楽しんでください。  温泉TRPG「ゆめぐり」のシステムをベースに作成しました。  遊ぶうちに本当に熊本県に観光しに行きたくなれば幸いです。  がんばれ熊本県! ◆プレイ人数  参加者1~5人推奨(ソロプレイ可) ◆必要な物  六面のサイコロ1個、メモ、熊本県の地図と資料(ネット可) ◆ゲームタイプ  箱庭・イベント遭遇型 ◆推定所要時間  30分~1時間(オフライン想定)  TRPGで大分県を観光しよう!  サイコロの出目によって観光地や温泉、グルメなど決まります。あなた達だけの観光の旅を演出して楽しんでください。  温泉TRPG「ゆめぐり」のシステムをベースに作成しました。  遊ぶうちに本当に大分県に観光しに行きたくなれば幸いです。  がんばれ大分県! ◆プレイ人数  参加者1~5人推奨(ソロプレイ可) ◆必要な物  六面のサイコロ1個、メモ、大分県の地図と資料(ネット可) ◆ゲームタイプ  箱庭・イベント遭遇型 ◆推定所要時間  30分~1時間(オフライン想定)  魔女が気に入るお菓子を皆で作って競うTRPGです。 一番だめな人は「いたずら」でカエルの姿に・・・! ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー2~5名 ◆必要な物  六面のサイコロ2つ、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  競争・評価型 ◆推定所要時間  30分~1時間(オフライン想定) 中世風の森の奥で数家族が森を開拓し村を作り始めてます… 木を切り、畑を耕し、水車をたて徐々に発展する村。 不思議な訪問者とのちょっとした事件を通して魔法の品をもらったり、村を襲う大災害に皆で対抗したりしながら、村の年代記を紡いでいきましょう。 ◆プレイ人数  ゲームマスター1名  プレイヤー1~4名 ◆必要な物  六面のサイコロ2つ、大きな紙、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  協同・創造型 ◆推定所要時間  30分~2時間(オフライン想定)

  • 温泉TRPG 「ゆめぐり」

     現代社会に疲れた人になって温泉でいやされましょう!  サイコロの出目によって、どんな宿に泊まるか、どんな温泉に入れるのか、温泉卓球やマッサージ、温泉街での様々なイベントなどあなた達だけの温泉旅を演出して楽しんでください。 ◆プレイ人数  参加者1~6人推奨(ソロプレイ可) ◆必要な物  六面のサイコロ1~3個、メモ用紙 ◆ゲームタイプ  箱庭・イベント遭遇型 ◆推定所要時間  30分~1時間(オフライン想定) 温泉TRPG「ゆめぐり」 画像クリックでダウンロード

  • 第5回「旅立ちの呪文詩」 | games

    ━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 中世ヨーロッパの生活呪文 (増補改訂版)第5回 「旅立ちの呪文詩」  テンプラソバ ━━━━━━━━━━━━━━━━■□■  ◇はじめに  おはようございます!  中世ヨーロッパと西洋風ファンタジーが大好きなテンプラソバです。  中世ヨーロッパの生活に密着した呪文についてのコラムの第5回「旅立ちの呪文詩」です。  紹介する呪文は、中世に書かれた医学書などに記載され現代まで伝わるもので、フィクションではなく実際に使われていた可能性が高い、ある意味「本物」の呪文です! ※注意  呪文や歴史背景などに関する内容は参考文献を元に書いています。  参考文献は記事の最後をご覧ください。  ドラマパートは私が創作したフィクションです。 ■ドラマパート前回のあらすじ  10世紀、中世イングランドのとある地方「ハマートン」で起きた牛泥棒事件。  牛泥棒メイソンを勾留した小屋は夜半に焼け落ち、跡から牛小屋番のダーシーと謎のブローチが見つかる。  リーチ(医者)のハードウルフによる「九つの薬草の呪文詩」での懸命な治療により、息も絶え絶えだったダーシーは命を取り留める。  ダーシーからの証言により、メイソンが隣の領地ブラートンと通じ良からぬことを企んでいる事を、ハマートン領主エドリック・ハマーは知る。  彼は、隣の領地ブラートンの領主ブラー家に事の真偽を確かめようとするのだった。 ■登場人物  エドリック・ハマー ハマートンの領主、若く妊娠中の妻がいる  ハードウルフ ハマートンの司祭でリーチ(医師)、呪文詩を駆使する  エドマ・ハマー エドリックの妻、お腹の子がもうすぐ産まれる  ロドルフ・ハマー エドリックの父。ハマートンの先代領主  ミルドイナ・ハマー エドリックの母  エグビン ハマー家の家人、エドリックが頼りにする男  メイソン ハマートンで牛泥棒など良からぬ事を企む者  ウィゴット ハマートンの農民で牛泥棒の被害者、メイソンの従兄弟 ◆「ヤコブの梯子」 ■支度  雨がしとしとと降っていた。  雨水がかからない軒先で、エドリックは旅支度をしていた。  エグビンがエドリックに鎖帷子(くさりかたびら)を着せる。  エドリックは両手を上げた格好で前かがみになり、手の先からエグビンが鎖帷子を通す。  体の中ほどまで通ったところで、エドリックは直立してジャンプしながら帷子を下にひきつつ体になじませる。  そして、エグビンが持ってきた皮ベルトを締め、ハマー家を象徴する山羊の紋章を縫い付けた黒い大きなマントを着ると、いかにも戦士の風情となった。  雨交じりの風は容赦なく体温を奪っていくから、防寒も大事だ。  鎖帷子の下には、キルトでできた厚手の衣装を着ている。  館の扉が開き、エドマが顔を出した。 「支度はできたのかしら?」  エドマは体が冷えないように、もこもこと膨らんだように見えるキルトのガウンを着込んでいる。  その状態で両手をさしのべ、エドリックを抱きよせる。 「準備万端だよ」  抱きついたエドマの背中を優しくたたきながら、エドリックはそうつぶやく。 「そうだ、あなた!お願いがあるのよ!  ついでに寄り道して、エンフリスさん、アガタさん、それから村はずれのメアリー婆さんの様子も確かめてね!  ここ2週間姿を見ないから心配で……」  いずれも、ハードウルフの診療所の常連だったご老人だが、最近は寒くなりなかなか家から出てこないらしい。 「まてまて、俺は往診にいくんじゃないんだぞ?」  エドリックは、両手を広げて見せ困った表情を浮かべる。 「いいじゃない!これも領主としての務めでしょ?」  そう言うエドマの顔には、いたずらそうな笑みが浮かんでいる。  そのような軽口の応酬をしていると、雨がやみ、あたりがしんと静かになった。  笑みを浮かべたエドマの目にはわずかに憂いがみられる。  彼女は、努めて明るくふるまっているのだ。  昨晩、あのような話を聞かされて不安に思わないわけがない。 ■家族会議  昨晩のことである。 「これは誘い出しの罠だ。行ってはならん!」  珍しく語気を強めたのは、エドリックの父であるロドルフ・ハマーだ。 「しかし、これだけの証拠では、裁判に訴えても退けられてしまいます」  机の上の魚が彫られた銀のブローチを指さしながら、エドリックが反論する。  テーブルの周りをイライラしながら歩きつつ、ロドルフが反論する。 「メイソン!奴がこの件にかかわってるんだぞ?!  ウィゴットの話によると、メイソンは若い頃どこかに放蕩していた時期があったという。   その時にブラー家とつながりができたのではないのか?  そして、我らハマー家の不名誉な噂が聞こえてくるようになったのも、奴が村に戻ってからだ。  奴は領民が不安に思うような噂をことさらに流していたのだ!  しかも奴の周囲で色々と物がなくなることが多かったと聞いている!  だが毎回決定的な証拠がなく、その点を追求できなかったとも!」  ロドルフは、紅潮した顔で両手を大きく振りかぶりながら、エドリックに迫りながら訴える。 「抜け目のない男ということでしょうね」  冷静にエドリックが切り返す。 「その『抜け目のない男』が、わざわざこんな『証拠』をおいて消えた!  これが罠でなくなんだというのだ!」  ロドルフは思わず拳を机に叩きつける。  すっかり熱くなったロドルフを、母ミルドイナがなだめ座るよううながす。  ロドルフはエールを一飲みし、乾いた喉を湿らせて席に座る。  その様子を見ていたエドリックが固い意志で述べる。 「だからこそブラー家の態度を見極めたいのです。  メイソンの企みがブラー家の意志によるものか、または愚かにも我らハマー家とブラー家を仲たがいさせようと扇動しているだけなのか?。  もし後者であれば、ハマー家にブラー家と争うつもりはないと、誤解を解く必要があるんです!」  そして、エドリックは、剣の束に手をそえて、静かに次の事を言った。 「だからブラートンに私はいくのです!  どのみちこのままでは、我らはブラー家と戦う事になりかねない……」  何かを悟ったエドマが血相を変えた顔でエドリックに問う。 「まさか……襲われる可能性が高いとわかってて行くの?!」  エドリックは毅然とした顔で返す。 「必ず生きて戻る」  頭を抱えるロドルフ。  血の気が引いた真っ青な顔で身を縮こまらせていくエドマ  母のミルドイナは、そんな彼女を抱いて慰めつつ珍しく、大きな声でエドリックを叱る。 「身重の妻になんて事を言うの!!」  家族全員が沈黙し、暖炉の薪がはぜる音だけがする。  家族全員わかっていたのだ。  こうなったエドリックは、制止を聞かず必ず実行すると。 ■「我が盾となれ」  上空の強い風が雨雲を押し流し、暗い空が少しだけ明るくなってきた。  エドリックもエドマも互いに言葉をかけられないまま抱き合っていた。  物思いにふけりつつ夫婦が抱き合う中、気まずそうにハードウルフが登場した。 「お邪魔でしたかな?」  すこしだけ恥じらうエドリックとエドマの姿を見て、くっくと苦笑しだした。 「わざわざ冷やかしにきたのか?」  やや不満げにいうエドリックに、ハードウルフは申し訳なさそうに否定のしぐさをする。 「いやいや、もうしわけございませぬ。  実は、一つ『旅の安全』を祈ろうと思いましてな」  そういって、二本の立てた指で十字を切るしぐさをしてみせる。 「まぁ!ぜひおねがいするわ!」  エドマはそういって、抱き留めていた旦那の体をハードウルフの前にぐっと差し出す。 「ハードウルフよ、そなたが祈るということは……?」  とエドリックが訪ねる。 「さよう。よく効く呪文詩をご用意いたしました」  とハードウルフが答える。  上層の速い風に流されるように重い雲が流れていく中、ハードウルフが目を閉じ、旅人が使う杖を静かに地面に立てる。  そして静かに呪文詩を唱えだす。  「我はこの杖に身を捧げ   神の監視に委ねる   苦悩に打ち勝つために   痛恨の打撃に対し   過酷な恐怖に対し   恐るべき広大さに対し   あらゆる忌まわしきもの   道行に踏み込んでくる   あらゆる憎むべきものすべてに対し   我はこの疾走せし呪文を唱え   打ち勝つよう この杖を振るい   滑らかに詠唱しつづけよう」*1  ハードウルフの詠唱する声は、ひときわ大きくなり、天上の全能の神にあらゆる災いから守るよう祈る。  キリスト教の12人の聖人と何千もの天使達に見守るように、祝福を与えるように祈りを続ける。  「汝ら全ての魂に光を与えよ   マタイの兜よ   我のものとなれ   マルコの鎖帷子よ   軽く、強き生命に満たされよ   ルカよ   我が剣となれ   鋭利に、鋭く切れよ   ヨハネよ   我が盾となれ   栄光を身にまといし   セラフィムの死に到る槍よ   我が手に」  まるでハードウルフの詠唱にうながされるように、重く垂れ込む雲間からわずかに光が差し、エドリックの頭、体、両腕、足を柔らかく包んでいく。  一陣の風が、エドリックとハードウルフの体に吹き付け、巻きつけた布が船の帆のようにふくらむ。  「我はこの風をつかまえる   うなる海にて   全てを包み込み   あらゆる敵に立ち向かう   我は友に出会う   我が留まることを許される   全能の神の恩恵によって   憎むべき者に対し固く結束する   我の人生を疑い続ける者   確立された   天使の花咲くところへ   天上界の高潔な掌の中で   天界の領域にて   我が留まることを許される限り   ここに留まることが許される限り」  静寂が訪れ、ハードウルフの詠唱が終わった事を告げた。  雲間から光が一筋さしこみ、エドリック達に静かに注がれた。  エドリックは、そのあまりの美しさに呆然と見入る。  ハードウルフは言う。 「あれは『ヤコブの梯子』とよばれるものです。  天井の世界に通じると、聖典に書かれています」  光芒から目を離せないまま、エドリックはハードウルフに問う 「あれも……  あれもお前の術なのか……」  ハードウルフはかぶりをふりつつ、しかし笑顔で次のように言った。 「さあ、それはわかりませぬ。  しかしこれだけはいえますぞ。  これは『良い兆し』であると!」  ~次回へ続く~ *1呪文詩は、”Old English Poetry in Facsimile”掲載の現代英語翻版を、著者自ら日本語に翻訳しました ◆解説編 ■旅の呪文について  旅の呪文詩は、航海の安全を祈るもの、または人生を航海にみたて人生そのものの前途を祝福する内容と考えられてます。  キリスト教の影響が非常に色濃い内容であり、聖人や天使から武器や装備を受け取る部分が、アングロサクソンの武装的な性格を表すという見方もあります。  多くの学者によって古代ゲルマンの旅の護りの呪文との関連性が指摘される一方で、古代アイルランドのロリカ(胸当て鎧)と呼ばれる厄除けの祈りとの関連性もあるようです。  古代アイルランド語の厄除けの祈り「クロスターノイブルガー・ロリカ」では、有害な影響から旅立つ人を守るため、「マリアのマント」などキリスト教の聖人や霊的な鎧を呼び起こす部分が、今回の旅の呪文と共通します。  旅の道中に危険がつきものだった中世初期に、旅の安全を祈る事は日常的だったと考えられています。 ■福音書の四聖人  武装を授けるキリスト教の聖人マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4名は、福音書記者と呼ばれ、4つの福音書のタイトルにもなっています。  これら4つの福音書の内容は、十二使徒やその弟子がイエス・キリストの言行録をまとめたものとされ、現代でのキリスト教でもとても重要な書籍です。  中世初期の聖書の写本は4つの福音書の写本が多く、そのため四人の使途の名前も広く知られていたと思われます。  例えば、装飾の美しさで有名なケルズの書も、4つの福音書の写本です。 ■各福音書と天使の紹介 ・マタイの福音書 十二使徒の一人マタイが書いたとされている。 ・マルコの福音書 十二使徒ペテロから聴いたことを元に、弟子マルコが書いたとされる。 ・ルカの福音書 十二使徒ペテロの協力者としてルカが書いたとされている。 ・ヨハネの福音書 十二使徒の一人ヨハネが書いたとされている。 ・セラフィム 熾天使(してんし)天使の最上級階級。カルデアの神話では稲妻の精とされているため、槍は雷の可能性があります。 ■中世の旅について  今日のような交通機関や観光市場が無かったこの時代の旅の種類には、軍事行動と交易と聖地巡礼があったようです。  ローマなど遠方まで巡礼に行けるのは一部の権力者のみでしたが、庶民も身近な聖地に巡礼する事があったとのこと。  例えば、10世紀後半のウィンチェスターにあったオールドミンスター大聖堂の聖スウィザンの聖遺物箱には、体が不自由な者や病人が列をなし、修道士が参拝者のために夜中に何度も讃美歌を歌うはめになったという話が伝わっています。 ■中世の移動手段  旅は基本的に自らの足で歩いたり、馬、または船を使っていたようです。  ローマ統治時代の道路を再整備し利用していたようですが道が悪い所も多く、水路の方がはるかに速かったようです。  アングロサクソン人は海岸近くや航行可能な河川沿いに重要な中心地を築くことを好んでいたともいわれています。  例えば7世紀の七王国の一つノーサンブリアで、バンバラからブラッドウェル・オン・シーの修道院までの380マイルを旅をしたとします。  陸路の場合、道路がよほど良い状況という前提で1日あたり15マイル進みます。一方船ですと、帆船だと81マイル/1日、手漕ぎの船だと41マイル/1日と圧倒的に早いです。  結果として、かかる期間は陸路だと25日間、海路だと手漕ぎで8~9日間、帆に風を受けて移動した場合4.5日でつく計算となります。 ◇次回予告  隣国ブラートンに少数の兵で向かったエドリック。  隣国との境にある林の中で不審な一団と邂逅する。  果たして何者なのか?!  中世ヨーロッパの生活呪文 第6回「蜂の群れへの呪文詩」  ご期待ください!  ◆参考文献・サイト ウェンディ・デイヴィス/編 鶴島博和/監訳 オックスフォード ブリテン諸島の歴史 3 ヴァイキングからノルマン人へ (慶應義塾大学出版会,2015年) (カレル・フェリックス・フライエ)Karel Felix Fraaije, Magical Verse from Early Medieval England: The Metrical Charms in Context, English Department University College London,2021,Doctoral thesis (Ph.D) ”Old English Poetry in Facsimile”,Martin Foys, University of Wisconsin-Madiso https://oepoetryfacsimile.org/ ※中世初期イギリスの詩を収集しオープンで共有するオンラインプロジェクト ”Time, Travel and Political Communities: Transportation and Travel Routes in Sixth- and Seventh-century Northumbria”,Lemont DobsonMailto,University of York,2005 https://www.heroicage.org/issues/8/dobson.html ※6-7世紀ノーザンブリアの移動事情についてまとめられた論文 "Travel and communication in Anglo-Saxon England",Stuart Brookes, UCL and University of Durham on 17th March 2018 https://www.berksarch.co.uk/index.php/travel-and-communication-in-anglo-saxon-england/ ※アングロ・サクソンの時代に、ローマ帝国が残した道路網を自ら拡張しつつ利用していた痕跡があるとする論文

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