34 results found with an empty search
- 中世ヨーロッパの生活呪文 | games
中世ヨーロッパの生活呪文 FT書房のメールマガジン「FT新聞」に2022年7月~12月、増補改訂版が2024年8月~11月に連載されました。 こちらには、増補改訂版をFT書房の許諾の元、掲載しています。 FT書房・保管庫 メールマガジン「FT新聞」の登録 第1回「中世イングランドの呪文詩」 領主エドリックは貴重な家畜の牛の消失に悩まされていた。 そこで不思議な呪文詩を使う医師(リーチ)を頼るが… 解説パートでは、10世紀イングランドと呪文詩を解説 第2回「いなくなった牛を探す呪文詩」 村の広間で牛を探す呪文詩を発動させた医師(リーチ)の ハードウルフとエドリック。果たして… 解説パートでは、牛を探す呪文詩と詩に登場する人物を解説 第3回「体を癒す呪文詩」 小屋の焼け跡に横たわる謎の人物。そのそばでエドリックが見つけたものとは? 解説パートでは、中世の現場検証と様々な病魔に対抗する呪文詩を紹介 第4回「九つの薬草の呪文詩」 瀕死のダーシーを癒すため、ハードウルフは薬草の力を呼び覚ます! 解説パートでは、九つの薬草の呪文詩の解説から、呪文の構造や技法を解説 第5回「旅立ちの呪文詩」 真相を確かめるためにブラートンへの旅支度を進めるエドリックのもとにハードウルフが旅の呪文詩を伴ってやってきます! 解説パートでは、呪文詩と中世の旅についても解説 第6回「蜂の群れへの呪文詩」 ついに真実にたどり着くエドリック達、しかしそこには危険が待ち受けていた! 解説パートでは、中世の養蜂について解説 第7回「回復の呪文」 領主エドリックがもたらした真実と誇り。 ハマートンが迎える新しい世界とは?! 解説パートでは、地力を回復する呪文のほか、当時のイングランドの農業、法制度、その後の趨勢などについて解説
- 温泉TRPG 「ゆめぐり」
現代社会に疲れた人になって温泉でいやされましょう! サイコロの出目によって、どんな宿に泊まるか、どんな温泉に入れるのか、温泉卓球やマッサージ、温泉街での様々なイベントなどあなた達だけの温泉旅を演出して楽しんでください。 ◆プレイ人数 参加者1~6人推奨(ソロプレイ可) ◆必要な物 六面のサイコロ1~3個、メモ用紙 ◆ゲームタイプ 箱庭・イベント遭遇型 ◆推定所要時間 30分~1時間(オフライン想定) 温泉TRPG「ゆめぐり」 画像クリックでダウンロード
- 第5回「旅立ちの呪文詩」 | games
━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 中世ヨーロッパの生活呪文 (増補改訂版)第5回 「旅立ちの呪文詩」 テンプラソバ ━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ◇はじめに おはようございます! 中世ヨーロッパと西洋風ファンタジーが大好きなテンプラソバです。 中世ヨーロッパの生活に密着した呪文についてのコラムの第5回「旅立ちの呪文詩」です。 紹介する呪文は、中世に書かれた医学書などに記載され現代まで伝わるもので、フィクションではなく実際に使われていた可能性が高い、ある意味「本物」の呪文です! ※注意 呪文や歴史背景などに関する内容は参考文献を元に書いています。 参考文献は記事の最後をご覧ください。 ドラマパートは私が創作したフィクションです。 ■ドラマパート前回のあらすじ 10世紀、中世イングランドのとある地方「ハマートン」で起きた牛泥棒事件。 牛泥棒メイソンを勾留した小屋は夜半に焼け落ち、跡から牛小屋番のダーシーと謎のブローチが見つかる。 リーチ(医者)のハードウルフによる「九つの薬草の呪文詩」での懸命な治療により、息も絶え絶えだったダーシーは命を取り留める。 ダーシーからの証言により、メイソンが隣の領地ブラートンと通じ良からぬことを企んでいる事を、ハマートン領主エドリック・ハマーは知る。 彼は、隣の領地ブラートンの領主ブラー家に事の真偽を確かめようとするのだった。 ■登場人物 エドリック・ハマー ハマートンの領主、若く妊娠中の妻がいる ハードウルフ ハマートンの司祭でリーチ(医師)、呪文詩を駆使する エドマ・ハマー エドリックの妻、お腹の子がもうすぐ産まれる ロドルフ・ハマー エドリックの父。ハマートンの先代領主 ミルドイナ・ハマー エドリックの母 エグビン ハマー家の家人、エドリックが頼りにする男 メイソン ハマートンで牛泥棒など良からぬ事を企む者 ウィゴット ハマートンの農民で牛泥棒の被害者、メイソンの従兄弟 ◆「ヤコブの梯子」 ■支度 雨がしとしとと降っていた。 雨水がかからない軒先で、エドリックは旅支度をしていた。 エグビンがエドリックに鎖帷子(くさりかたびら)を着せる。 エドリックは両手を上げた格好で前かがみになり、手の先からエグビンが鎖帷子を通す。 体の中ほどまで通ったところで、エドリックは直立してジャンプしながら帷子を下にひきつつ体になじませる。 そして、エグビンが持ってきた皮ベルトを締め、ハマー家を象徴する山羊の紋章を縫い付けた黒い大きなマントを着ると、いかにも戦士の風情となった。 雨交じりの風は容赦なく体温を奪っていくから、防寒も大事だ。 鎖帷子の下には、キルトでできた厚手の衣装を着ている。 館の扉が開き、エドマが顔を出した。 「支度はできたのかしら?」 エドマは体が冷えないように、もこもこと膨らんだように見えるキルトのガウンを着込んでいる。 その状態で両手をさしのべ、エドリックを抱きよせる。 「準備万端だよ」 抱きついたエドマの背中を優しくたたきながら、エドリックはそうつぶやく。 「そうだ、あなた!お願いがあるのよ! ついでに寄り道して、エンフリスさん、アガタさん、それから村はずれのメアリー婆さんの様子も確かめてね! ここ2週間姿を見ないから心配で……」 いずれも、ハードウルフの診療所の常連だったご老人だが、最近は寒くなりなかなか家から出てこないらしい。 「まてまて、俺は往診にいくんじゃないんだぞ?」 エドリックは、両手を広げて見せ困った表情を浮かべる。 「いいじゃない!これも領主としての務めでしょ?」 そう言うエドマの顔には、いたずらそうな笑みが浮かんでいる。 そのような軽口の応酬をしていると、雨がやみ、あたりがしんと静かになった。 笑みを浮かべたエドマの目にはわずかに憂いがみられる。 彼女は、努めて明るくふるまっているのだ。 昨晩、あのような話を聞かされて不安に思わないわけがない。 ■家族会議 昨晩のことである。 「これは誘い出しの罠だ。行ってはならん!」 珍しく語気を強めたのは、エドリックの父であるロドルフ・ハマーだ。 「しかし、これだけの証拠では、裁判に訴えても退けられてしまいます」 机の上の魚が彫られた銀のブローチを指さしながら、エドリックが反論する。 テーブルの周りをイライラしながら歩きつつ、ロドルフが反論する。 「メイソン!奴がこの件にかかわってるんだぞ?! ウィゴットの話によると、メイソンは若い頃どこかに放蕩していた時期があったという。 その時にブラー家とつながりができたのではないのか? そして、我らハマー家の不名誉な噂が聞こえてくるようになったのも、奴が村に戻ってからだ。 奴は領民が不安に思うような噂をことさらに流していたのだ! しかも奴の周囲で色々と物がなくなることが多かったと聞いている! だが毎回決定的な証拠がなく、その点を追求できなかったとも!」 ロドルフは、紅潮した顔で両手を大きく振りかぶりながら、エドリックに迫りながら訴える。 「抜け目のない男ということでしょうね」 冷静にエドリックが切り返す。 「その『抜け目のない男』が、わざわざこんな『証拠』をおいて消えた! これが罠でなくなんだというのだ!」 ロドルフは思わず拳を机に叩きつける。 すっかり熱くなったロドルフを、母ミルドイナがなだめ座るよううながす。 ロドルフはエールを一飲みし、乾いた喉を湿らせて席に座る。 その様子を見ていたエドリックが固い意志で述べる。 「だからこそブラー家の態度を見極めたいのです。 メイソンの企みがブラー家の意志によるものか、または愚かにも我らハマー家とブラー家を仲たがいさせようと扇動しているだけなのか?。 もし後者であれば、ハマー家にブラー家と争うつもりはないと、誤解を解く必要があるんです!」 そして、エドリックは、剣の束に手をそえて、静かに次の事を言った。 「だからブラートンに私はいくのです! どのみちこのままでは、我らはブラー家と戦う事になりかねない……」 何かを悟ったエドマが血相を変えた顔でエドリックに問う。 「まさか……襲われる可能性が高いとわかってて行くの?!」 エドリックは毅然とした顔で返す。 「必ず生きて戻る」 頭を抱えるロドルフ。 血の気が引いた真っ青な顔で身を縮こまらせていくエドマ 母のミルドイナは、そんな彼女を抱いて慰めつつ珍しく、大きな声でエドリックを叱る。 「身重の妻になんて事を言うの!!」 家族全員が沈黙し、暖炉の薪がはぜる音だけがする。 家族全員わかっていたのだ。 こうなったエドリックは、制止を聞かず必ず実行すると。 ■「我が盾となれ」 上空の強い風が雨雲を押し流し、暗い空が少しだけ明るくなってきた。 エドリックもエドマも互いに言葉をかけられないまま抱き合っていた。 物思いにふけりつつ夫婦が抱き合う中、気まずそうにハードウルフが登場した。 「お邪魔でしたかな?」 すこしだけ恥じらうエドリックとエドマの姿を見て、くっくと苦笑しだした。 「わざわざ冷やかしにきたのか?」 やや不満げにいうエドリックに、ハードウルフは申し訳なさそうに否定のしぐさをする。 「いやいや、もうしわけございませぬ。 実は、一つ『旅の安全』を祈ろうと思いましてな」 そういって、二本の立てた指で十字を切るしぐさをしてみせる。 「まぁ!ぜひおねがいするわ!」 エドマはそういって、抱き留めていた旦那の体をハードウルフの前にぐっと差し出す。 「ハードウルフよ、そなたが祈るということは……?」 とエドリックが訪ねる。 「さよう。よく効く呪文詩をご用意いたしました」 とハードウルフが答える。 上層の速い風に流されるように重い雲が流れていく中、ハードウルフが目を閉じ、旅人が使う杖を静かに地面に立てる。 そして静かに呪文詩を唱えだす。 「我はこの杖に身を捧げ 神の監視に委ねる 苦悩に打ち勝つために 痛恨の打撃に対し 過酷な恐怖に対し 恐るべき広大さに対し あらゆる忌まわしきもの 道行に踏み込んでくる あらゆる憎むべきものすべてに対し 我はこの疾走せし呪文を唱え 打ち勝つよう この杖を振るい 滑らかに詠唱しつづけよう」*1 ハードウルフの詠唱する声は、ひときわ大きくなり、天上の全能の神にあらゆる災いから守るよう祈る。 キリスト教の12人の聖人と何千もの天使達に見守るように、祝福を与えるように祈りを続ける。 「汝ら全ての魂に光を与えよ マタイの兜よ 我のものとなれ マルコの鎖帷子よ 軽く、強き生命に満たされよ ルカよ 我が剣となれ 鋭利に、鋭く切れよ ヨハネよ 我が盾となれ 栄光を身にまといし セラフィムの死に到る槍よ 我が手に」 まるでハードウルフの詠唱にうながされるように、重く垂れ込む雲間からわずかに光が差し、エドリックの頭、体、両腕、足を柔らかく包んでいく。 一陣の風が、エドリックとハードウルフの体に吹き付け、巻きつけた布が船の帆のようにふくらむ。 「我はこの風をつかまえる うなる海にて 全てを包み込み あらゆる敵に立ち向かう 我は友に出会う 我が留まることを許される 全能の神の恩恵によって 憎むべき者に対し固く結束する 我の人生を疑い続ける者 確立された 天使の花咲くところへ 天上界の高潔な掌の中で 天界の領域にて 我が留まることを許される限り ここに留まることが許される限り」 静寂が訪れ、ハードウルフの詠唱が終わった事を告げた。 雲間から光が一筋さしこみ、エドリック達に静かに注がれた。 エドリックは、そのあまりの美しさに呆然と見入る。 ハードウルフは言う。 「あれは『ヤコブの梯子』とよばれるものです。 天井の世界に通じると、聖典に書かれています」 光芒から目を離せないまま、エドリックはハードウルフに問う 「あれも…… あれもお前の術なのか……」 ハードウルフはかぶりをふりつつ、しかし笑顔で次のように言った。 「さあ、それはわかりませぬ。 しかしこれだけはいえますぞ。 これは『良い兆し』であると!」 ~次回へ続く~ *1呪文詩は、”Old English Poetry in Facsimile”掲載の現代英語翻版を、著者自ら日本語に翻訳しました ◆解説編 ■旅の呪文について 旅の呪文詩は、航海の安全を祈るもの、または人生を航海にみたて人生そのものの前途を祝福する内容と考えられてます。 キリスト教の影響が非常に色濃い内容であり、聖人や天使から武器や装備を受け取る部分が、アングロサクソンの武装的な性格を表すという見方もあります。 多くの学者によって古代ゲルマンの旅の護りの呪文との関連性が指摘される一方で、古代アイルランドのロリカ(胸当て鎧)と呼ばれる厄除けの祈りとの関連性もあるようです。 古代アイルランド語の厄除けの祈り「クロスターノイブルガー・ロリカ」では、有害な影響から旅立つ人を守るため、「マリアのマント」などキリスト教の聖人や霊的な鎧を呼び起こす部分が、今回の旅の呪文と共通します。 旅の道中に危険がつきものだった中世初期に、旅の安全を祈る事は日常的だったと考えられています。 ■福音書の四聖人 武装を授けるキリスト教の聖人マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4名は、福音書記者と呼ばれ、4つの福音書のタイトルにもなっています。 これら4つの福音書の内容は、十二使徒やその弟子がイエス・キリストの言行録をまとめたものとされ、現代でのキリスト教でもとても重要な書籍です。 中世初期の聖書の写本は4つの福音書の写本が多く、そのため四人の使途の名前も広く知られていたと思われます。 例えば、装飾の美しさで有名なケルズの書も、4つの福音書の写本です。 ■各福音書と天使の紹介 ・マタイの福音書 十二使徒の一人マタイが書いたとされている。 ・マルコの福音書 十二使徒ペテロから聴いたことを元に、弟子マルコが書いたとされる。 ・ルカの福音書 十二使徒ペテロの協力者としてルカが書いたとされている。 ・ヨハネの福音書 十二使徒の一人ヨハネが書いたとされている。 ・セラフィム 熾天使(してんし)天使の最上級階級。カルデアの神話では稲妻の精とされているため、槍は雷の可能性があります。 ■中世の旅について 今日のような交通機関や観光市場が無かったこの時代の旅の種類には、軍事行動と交易と聖地巡礼があったようです。 ローマなど遠方まで巡礼に行けるのは一部の権力者のみでしたが、庶民も身近な聖地に巡礼する事があったとのこと。 例えば、10世紀後半のウィンチェスターにあったオールドミンスター大聖堂の聖スウィザンの聖遺物箱には、体が不自由な者や病人が列をなし、修道士が参拝者のために夜中に何度も讃美歌を歌うはめになったという話が伝わっています。 ■中世の移動手段 旅は基本的に自らの足で歩いたり、馬、または船を使っていたようです。 ローマ統治時代の道路を再整備し利用していたようですが道が悪い所も多く、水路の方がはるかに速かったようです。 アングロサクソン人は海岸近くや航行可能な河川沿いに重要な中心地を築くことを好んでいたともいわれています。 例えば7世紀の七王国の一つノーサンブリアで、バンバラからブラッドウェル・オン・シーの修道院までの380マイルを旅をしたとします。 陸路の場合、道路がよほど良い状況という前提で1日あたり15マイル進みます。一方船ですと、帆船だと81マイル/1日、手漕ぎの船だと41マイル/1日と圧倒的に早いです。 結果として、かかる期間は陸路だと25日間、海路だと手漕ぎで8~9日間、帆に風を受けて移動した場合4.5日でつく計算となります。 ◇次回予告 隣国ブラートンに少数の兵で向かったエドリック。 隣国との境にある林の中で不審な一団と邂逅する。 果たして何者なのか?! 中世ヨーロッパの生活呪文 第6回「蜂の群れへの呪文詩」 ご期待ください! ◆参考文献・サイト ウェンディ・デイヴィス/編 鶴島博和/監訳 オックスフォード ブリテン諸島の歴史 3 ヴァイキングからノルマン人へ (慶應義塾大学出版会,2015年) (カレル・フェリックス・フライエ)Karel Felix Fraaije, Magical Verse from Early Medieval England: The Metrical Charms in Context, English Department University College London,2021,Doctoral thesis (Ph.D) ”Old English Poetry in Facsimile”,Martin Foys, University of Wisconsin-Madiso https://oepoetryfacsimile.org/ ※中世初期イギリスの詩を収集しオープンで共有するオンラインプロジェクト ”Time, Travel and Political Communities: Transportation and Travel Routes in Sixth- and Seventh-century Northumbria”,Lemont DobsonMailto,University of York,2005 https://www.heroicage.org/issues/8/dobson.html ※6-7世紀ノーザンブリアの移動事情についてまとめられた論文 "Travel and communication in Anglo-Saxon England",Stuart Brookes, UCL and University of Durham on 17th March 2018 https://www.berksarch.co.uk/index.php/travel-and-communication-in-anglo-saxon-england/ ※アングロ・サクソンの時代に、ローマ帝国が残した道路網を自ら拡張しつつ利用していた痕跡があるとする論文
- 1ページTRPGコンテスト | games
1ページTRPGコンテスト 2017年8月に発売された「GMマガジン Vol.1」誌上にて「1ページTRPGコンテスト」が開催されました。作品はツイッター上でハッシュタグをつけて応募されたものの中から審査されています。私ことテンプラソバも、新作1作品含め8作品を投稿しています。いずれも、以下のツイッターモーメントに収録していますので、ご興味がある方はどうぞご覧になってください! 1ページTRPGコンテスト応募作品
- 第7回「回復の呪文」 | games
━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 中世ヨーロッパの生活呪文 (増補改訂版)第7回 「回復の呪文」 テンプラソバ ━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ おはようございます! 中世ヨーロッパと西洋風ファンタジーが大好きなテンプラソバです。 中世ヨーロッパの生活に密着した呪文についてのコラムの第7回「回復の呪文」となります。 紹介する呪文は、中世に書かれた医学書などに記載され現代まで伝わるもので、フィクションではなく実際に使われていた可能性が高い、ある意味「本物」の呪文です! 舞台は、中世前半のイングランドのとある田舎の村です。 ※注意 呪文や歴史背景などに関する内容は参考文献を元に書いています。 参考文献は記事の最後をご覧ください。 ドラマパートは私が創作したフィクションです。 ■ドラマパート前回のあらすじ ブラートンの森で待ち構えていた怪しい武装集団。 その中にメイソンの姿を見つけたエドリックは声をかけた。 怪しい集団の首領らしき大きな男は、ハマートンを併合しようとブラー家が画策していたことを、ばらしたうえで襲い掛かる。 抵抗するエドリックだったが肩を槍が貫通し、動けなくなったところでまばゆい光に包まれたのだった! ■登場人物 エドリック・ハマー ハマートンの領主 ハードウルフ ハマートンの司祭でリーチ(医師)、呪文詩を駆使する エドマ・ハマー エドリックの妻、お腹の子がもうすぐ産まれる ロドルフ・ハマー エドリックの父 ミルドイナ・ハマー エドリックの母 エグビン ハマー家の家人、エドリックが頼りにする男 エリク 元デーン人(ヴァイキング)で、ハマー家の警備担当 フレッチャー ハマー家の警備担当。普段はエリクに鍛えられている メイソン ハマートンで牛泥棒など良からぬ事を企む者 ◆「裁きと回復と」 ■ワイルドハント 肩を槍で突き貫かれ、大柄の男が戦斧を振り上げとどめを刺しにくる光景を見たエドリック。 「これまでか」とそう思った刹那、目の前がおおきなまばゆい光に包まれた。 その光は襲い掛かってくる大男をも包みこみ、次の瞬間大音響とともに周囲を吹き飛ばした。 エドリックは、大木に打ち付けられ、背中の激痛と大きな耳鳴りに包まれた。 激痛でぼやけた頭で彼が見た光景は、地面をほとばしるいく筋もの雷光だった。 轟音と共に雷が戦場に落ち、よく枯れた葉や草が燃え始めあたりは煙に包まれだし、撃たれて黒焦げになるもの、逃げ惑う者とで騒然としている。 消えゆく意識の中でエドリックは、空に凄絶な笑顔で地面に向かいあざけりの笑いを浮かべる猛き乙女たちと、その中央に馬にまたがり長髪につばが広い帽子を目深にかぶった男が見えたような気がした。 そしてその男の雰囲気がハードウルフに何となく似ているとも感じつつ、エドリックの意識は切れた。 ■回復の呪文 日が西に傾く頃、ハマートンの人々が収穫後の畑の周りをぐるりと取り囲み、中心を見ながら両手を合わせて祈っていた。 畑の中心にはハードウルフが一人で立って、何かを祈っている。 彼の服は普段着ではなく、キリスト教のミサをする際に使用する白く立派なものだ。 離れた所には、エドマ、ロドルフ、ミルドイナの3人が並んで立っている。 村人総出で、畑の地力を回復する儀式をしているのだ。 1日がかりの儀式を経た最後のしめくくりとして、ハードウルフがそのよく通る声で祈るように最後の呪文を唱えていた。 「エルケ、エルケ、エルケ、大地の母よ、 全能の神、永遠の主が汝に与えんことを、 成長し繁茂する土地を、 繁栄し実り豊かなる(土地を)、 輝けるキビの穂を、 また小麦の穂を、 また大地より収穫さるる なべての穀物を 永遠の主が彼に確約せんことを、 天に居る彼の聖者らが(確約せんことを)、 彼の作物あらゆる敵に対し守られんと、 あらゆる害悪に対し 土地じゅうに広がりし魔術による(害悪に対し)。 我この世を創造りたる君主に祈らん いかなる女子もさほど雄弁ならず、いかなる男子もさほどならず、 かく語られし言葉を覆すほどには、」* 呪文を唱え終わると、あたりに静寂が訪れた。 皆、頭を垂れて祈っていた。 その祈りは畑の地力だけでなく、領主エドリックの無事の帰還も兼ねていたのだろう。 ふと少年が夕闇の中で何かに気づき、 「あれは何?」 と指をさす。 少年が指さした方角を見た大人数名が、夕闇の中を動く怪しくきらめく赤い光を見た。 ざわつきに気づいたエドマが、騒ぎの方角に目を凝らした。 彼女は、何かに気づいて呻き声をもらし急に赤くちらつく光に向かって駆けだしたのだ。 エドマの使用人があわてて後を追いかける。 使用人は大声で、 「奥さま!走るのは危のうございます!」 と警告する。 しかし、エドマの耳には入っていない様子だ。 エドマにつられて、村人十数名も赤い光をめざす。 それは馬だった。 スノターが足をやや引きずりながらこちらに向かって来ていたのだ。 荒い鼻息と憔悴した顔が痛々しい。 スノターの背中には誰かが横たわるように乗っていて、その指先で金属か宝石かが夕日に赤く照らされきらめいているのだ。 それは、エドリックだった。 マントは全部ちぎれ去り、鎧の肩や腕の部分が裂け、中から深い傷が見える。 かなりの重傷だ。 しかし不思議な事に、血は乾き切って止まっているように見える。 そして指にはめている指輪が、奇妙な事に夕日に照らされ赤くほのかに輝いているのだ。 エドマは呆然とした顔で、スノターに走り寄り震える手でエドリックに触れる。 エドリックは、目を閉じてピクリとも動かない。 しかし、まだ温かい。 「あなた…エドリック、お願いよ……お願い……」 そう祈るように言いつつ、首筋をさわると脈がある! 弱弱しいが呼吸もしている。 「ハードウルフ!ハードウルフ早く来て! エドリックよ!! まだ息がある! おねがい!お願い!!!」 エドマが振り返り、こちらに向かって走ってくるハードウルフにとても大きな声で叫んだ。 周りの村人もエドリックにかけよりスノターから降ろし、ハードウルフの診療所に急いで運ぼうとしている。 もちろんハードウルフとエドマもそれに続いた。 「生きて戻るという誓い。よくぞ果たした……」 館に運ばれるエドリックを遠くから見ていたロドルフはそうつぶやく。 頬に涙を流した母が、父の肩にそっと手をおくと、父はその手をそっと握り返した。 ■裁きと回復 エドリックの帰還から数か月がたったある日のことだ。 イングランド王エドガーは、とある伯爵(エアルドールマン)が最近実施した裁判についての報告を受けていた。 まず、ブラートンを治める従士(セイン)のシグヘルム・ブラーより、隣領地であるハマートンをブラートンに併合したいという訴えがあったという。 訴状によると、ハマートンの領主ハマーは統治能力がないために牛がしょっちゅう盗まれ、作物は育ちが悪く、あげく領主のハマーは野外をふらついている時に野盗に殺されたため、不満を持ったハマーの領民たちがシグヘルム・ブラーに併合を訴えているということであった。 伯爵(エアルドールマン)は直ちに調査官を任命し、ハマートンに派遣し詳しく調べさせた。 一方で、伯爵(エアルドールマン)は配下の従士(セイン)達を「集会」に招集し、ブラーの訴えについて裁判を実施すると宣言した。 裁判にて調査官達は、まずブラーの訴える内容に一致する噂を確認したと報告した。 その報告にわが意を得たりと得意になったブラーに対して、調査官はこうも言ったそうだ。 「その噂の反証を連れてきた」 まず、連れてこられた男はメイソンと名乗った。 彼の目の焦点はややあってないものの、宣誓の後に自分がシグヘルム・ブラーの指示でハマートンによからぬ噂を流したり、盗難などの事件を複数起こしたと告白したのだ。 シグヘルム・ブラーはこれに対して 「名誉なき下賤な者のいう事に過ぎず、信じるに値しない」 と反論した。 そうすると調査官は 「では、名誉ある従士(セイン)の言葉ならよいのだな」 と告げ、ある者を連れてきた。 足を引きずり、動かぬ左手を肩から布で吊り下げた姿が痛々しいその者は、自らをハマートンの領主エドリック・ハマーと名乗った。 彼の姿を見たシグヘルム・ブラーは驚愕の表情で叫んだ。 「なぜ?!なぜ生きている!!」 そんなシグヘルム・ブラーに冷たい一瞥を加えた後で、エドリック・ハマーは真実を話すと宣誓をした。 そして、エドリック・ハマーは、メイソンの持ち物としてブラーの紋章が入ったブローチを掲げながら、今回の訴えは全てブラー家の企みによる、事実無根の訴えであることと、その詳細を話しだした。 日が西に傾く頃には、全ての証言が揃い出た。 ハマー、メイソン、そして調査官。 この3者の証言が導き出した答えは全て、ブラーが悪意をもってハマーの名誉を貶め、領地簒奪を狙ったという内容だった。 すっかり青ざめ、言葉を失くしたシグヘルム・ブラー。 伯爵(エアルドールマン)は熟考の末に、次のように宣告した。 一つ、シグヘルム・ブラーは即時引退し、5歳の息子に領主権を継承させること。 一つ、息子が成人するまでエドリック・ハマーを後見人とし、その間ブラートンの領主代行としてエドリック・ハマーを任命するということ。 伯爵の裁定に対し、集会は万雷の拍手で締めくくられたとのことだ。 伯爵は王にため息交じりにこう告げた。 「まったく嘆かわしいことです。 我ら一丸となって、デーン人どもをこのブリテンよりなんとか退け、陛下の御代にやっと平和が訪れましたのに。 早速われらの間で争いなどと」 若きエドガー王は、やや物憂げに返事をする。 「兄が急に亡くなって、私が王位を継いで日がまだ浅い。 私の若さが招いた騒乱かもしれないな」 伯爵は恐縮してあたまを振りながら、こう言った。 「そんなに、ご自分を卑下なさらないでください。 あなた様を支えるために、われらがいるのです」 慰められた王は、屋外の流れる雲を見つめる。 「ともあれ、従士ハマーとハマートンはその名誉を回復したのだな」 若きイングランド王エドガーの治世は、デーン人の襲来がほとんどない平和な時代となり後の時代に「平和王」と呼ばれることとなった。 ■エピローグ 裁判からしばらくたったある冬の夜。 館の暖炉の前にハマー家の面々が集まっていた。 一家の中心から、元気な赤ちゃんの声が聞こえる。 エドリックとエドマの子、女の子のエルヒルドの泣き声だ。 エドリックが大けがを負いつつも村に戻ったあの晩に、エドマが産気づき翌朝早朝にエルヒルドは産まれた。 回復後にエドリックは娘が生まれる瞬間に立ち会えなかったことを悔しがったが、それは妻を心配させた罰だとエドマが諭したという。 そういいつつも、二人の表情は幸せそうだった。 エドリックを無事村に連れ帰ったスノターは、実は「お土産」も持ってきていたのだ。 それは縄で両手をくくられたメイソンだった。 彼はスノターにつながれたまま延々連行され、村に着いたときは抵抗する意志も失くし、素直に捕まったという。 部屋の扉が開くと、エグビンとフレッチャーが入ってきた。 二人は見回りの報告をエドリックにすると、エドリックは腰かけて蜂蜜酒を飲むよう勧めた。 ブラー家の襲撃の後、エグビンとフレッチャーは大けがを負ったものの、捕虜として生きていた。 エリクが死力を尽くして戦い抜いたため、二人はかろうじて生き残ったと言えるだろう。 エリクは大きな笑い声と「オーディン」という神の名前を何度も叫びつつ、ブラートンの兵士たちを次々と屠っていった。 最後に、6本の槍に貫かれてこと切れた時は、満足そうな笑みだったという。 彼は、きっと彼の信じる神々のところ(ヴァルハラ)にいったのだろう。 エグビンが捕まりそうな時、ハマー家で使われる山羊のレリーフを縫ったマントを被った遺体に覆いかぶさって泣いていたという。 遺体の顔は焼け焦げ、切り傷も多く判別がつかなかった。 状況からしてエドリックの遺体だろうと考えたブラーの生き残りの兵は、シグヘルム・ブラーに捕虜を連れて行きつつ自分たちがいかに首尾よく仕事を成し遂げたか報告したわけだ。 実は、エグビンがひと芝居した結果だったわけだ。 エドリックをスノターに乗せ、メイソンを縄で縛ってスノターの鞍に素早くくくりつけたのもエグビンだ。 彼の機転と知略に、エドリックは何度も救われている。 エドリックは、今回の働きと普段の献身に報いるためとしてエグビンに新しく土地を与えたいと、伯爵(エアルドールマン)に上申しているらしい。 エグビンは固辞しそうだが、エドリックにしたらこんなものでは全然足りないという思いだ。 暖炉の薪が爆ぜる音がする。 冬のごちそうと蜂蜜酒とで、皆の顔は上気し笑顔に包まれている。 ハマー家とハマートンにしばしの平穏が訪れたのだ。 ~終幕~ * 呪文詩の訳文は、唐沢 一友 (著)アングロ・サクソン文学史:韻文編 (横浜市立大学叢書—シーガルブックス, 東信社, 2004) より引用しています。 ◆解説編1 ■ワイルドハント ワイルドハントとは、空や大地を大挙して移動する伝説上の猟師団です。イギリスをはじめ、西欧から東欧まだ幅広い地域に伝えられる民間伝承に登場します。 狩猟道具を携えた亡霊や妖精が馬や猟犬と共にリーダーに率いられ、目撃者には死をもたらすとも、戦や疫病をもたらすとも言われています。 ワイルドハントのリーダーは、オーディンやアーサー王など国によって異なります。 イギリスでは、例えば修道院の歴史を記したピーターバラの年代記(1122年)や、12世紀の書籍で伝えられています。そこでは、ブリトン人の伝説の王「ヘルラ」が、ワイルドハントのリーダーとされています。 ヘルラ王が妖精郷で妖精の結婚式に出る間に地上では何百年も経過し、アングロ・サクソンの支配の時代になっていました。ヘルラ王は驚くものの、妖精の呪いで馬から降りることができなくなり、供と一緒にさまようことになる。これがヘルラ王のワイルドハントの始まりとされています。 一方で、ウォーデンまたはオーディンが率いるワイルドハントには、ヴァルキリーとも考えられる「猛き乙女」達が従うという話もあります。 ■回復の呪文が刻まれた指輪 現在大英博物館には、アングロサクソン時代の金の指輪が保管されています。 指輪が発見された場所にちなんで「キングムーアの指輪」と呼ばれています。 キングムーアの指輪には、ルーン文字で呪文が刻まれています。 内容は出血や苦痛を禁じる、治癒・回復の呪文と推測されています。 同じ呪文は、ハードウルフも持っている医療書「ボールドのリーチブック」にも記載され、指輪の呪文の解読に一役かったそうです。 ■地力回復の呪文詩 ハードウルフが唱えていた地力を回復する呪文詩の内容は、呪文詩の中で一番キリスト教の影響が色濃いものです。 物語で描かれなかった儀式の前半の内容は、こんな感じです。 畑から4つ芝生を取り、根の部分に蜂蜜、香油、ミルクなどを混ぜたものをぬり、キリスト教のミサに運び、再び畑に戻したあと地面に植えて小さな十字架を立てます。 そして司祭にキリスト教の祈りをさせたり、聖水を使ったりとかなりキリスト教的な内容で儀式は進みます。 土地が作物を育む力も、外部からの超自然的な悪しき力で阻害されると、当時は考えられてました。 そのため、白魔術の儀式によって悪しき力に打ち勝つという発想が、この呪文詩の根底にはあります。 身体を回復させる呪文詩と発想は同じですね。 呪文詩の終盤にでてくる「エルケ」とはゲルマンで古来から信仰されている大地母神ではないかと考えられています。 この部分は、古代ゲルマンの伝統を引き継いだ内容のようです。 一方で、呪文詩の内容は「ノアの箱舟」の洪水伝説を儀式的に再現したものとする説もあります。 呪文詩では聖書のノアのように神との人類の契約を再構築しそこから新たな生命が生まれる再生の箱舟を構築することで、地力をよみがえらせようとする内容でもあるとしています。 ■アングロ・サクソン時代の農業 この時代の畑の作物は一粒小麦、大麦、ライムギ、燕麦、エンドウ豆、レンズ豆などでした。 また、家畜として牛、豚、鶏、羊なども飼っていました。 9世紀頃には、何も作物を植えずに畑を休ませる「休耕地」もあったようですが、次第に地力を失っていく事も大きな悩みの一つだったのでしょう。 ちなみに中世の農法として有名な三圃式農業がブリテン島に登場するのは、13世紀頃という話があります。 三圃式農業とは、土地を冬の作物、夏の作物、休耕地の三種類に区画整理し、輪作によって生産性を向上させる中世ヨーロッパ時代の農法の一つです。 ■紛争の解決と裁判 中世の裁判と言えば、決闘の勝敗で決着をつける「決闘裁判」が有名です。 実は、ブリテン島に決闘裁判が持ちこまれたのは、11世紀以降と考えられています。 また当時は、神明裁判といって大けがをするような試練を被告・原告双方に課して、「神の加護」で傷がほとんど無いほうを正しいとする呪術的な裁判もされていたそうです。 例えば火で熱した鉄の棒を素手でもって運んだあとの火傷具合で判断する熱鉄裁判や、熱湯から石を取り出して火傷具合で判断する熱湯裁判などがあったそうです。 しかし、多くの場合は「賢人会議」という王や伯爵(エアルドールマン)が主催する会議にて原告・被告双方の話を聴いて、任命した調査官の報告を参考に吟味し裁定していたようです。 今日のような裁判のみを専門とする機関はまだありませんでした。 ◆中世初期〜中期のブリテン島 ヴァイキングとも呼ばれるデーン人達は、8世紀末にブリテン島に侵攻します。 当時七王国を形成していたアングロ・サクソン人達は必死に抵抗します。 しかし、侵攻はとどまらずデーン・ロウとよばれる広大な土地をデーン人に奪われます。 その後、アルフレッド大王が軍制を改革し、セインやフュルドといった軍制が整います。 その孫のアゼルスタンがデーン人を打ち破りイングランドの王となります。 物語に出てきたエドガー王の治世(942年〜975年)は、デーン人の襲撃も少なく比較的平和な時代でした。 そのため、彼は「平和王」の異名も持ちます。 しかし10世紀末になると、再びデーン人が襲来する時代となります。 11世紀にはデーン人に支配され、1066年のノルマンディーからの大攻勢「ノルマン・コンクエスト」によって、アングロ・サクソンの王朝は途絶え、ノルマン朝の治世が開始されます。 ◆その後の呪文詩 エドガー王の治世に、世俗化していた各キリスト教会に厳格な戒律を持ち込む宗教改革が実施されています。 10世紀以降、呪文詩が使われたのかどうかははっきりとわかりません。 しかし、イギリスにはカニングマン、カニングウーマンと呼ばれる古代由来の魔法などを使う人々が近世までいました。 もしかしたら、呪文詩の系譜は彼らの中で細々と続いていたのかもしれません。 ◆最後に感謝の言葉 この物語と歴史まとめを発表する機会をくださり、また暖かくご指導くださった杉本ヨハネさんとFT書房のみなさんに、最大の感謝をささげます。 また、2024年に増補改訂という機会をくださり、ふたたびFT新聞に掲載いただく機会を作ってくださったFT書房の水波流さんにも最大限の感謝を申し上げたいと思います。 そして、FT新聞やX(旧Twitter)などで沢山の反応と感想をいただき、誠にありがとうございました。 皆様のおかげで、呪文詩という面白いテーマを紹介する事ができました。 本当にありがとうございました! ◆参考文献 唐沢 一友 (著)アングロ・サクソン文学史:韻文編 (横浜市立大学叢書—シーガルブックス, 東信社, 2004年) 唐沢 一友 (著)アングロ・サクソン文学史:散文編 (横浜市立大学叢書—シーガルブックス, 東信社, 2008年) 吉見昭徳(著)古英語詩を読む ~ルーン詩からベーオウルフへ~(春風社,2008年) ウェンディ・デイヴィス/編 鶴島博和/監訳 オックスフォード ブリテン諸島の歴史 3 ヴァイキングからノルマン人へ (慶應義塾大学出版会,2015年) (カレル・フェリックス・フライエ)Karel Felix Fraaije, Magical Verse from Early Medieval England: The Metrical Charms in Context, English Department University College London,2021,Doctoral thesis (Ph.D) King Herla and the Wild Hunt Walter Map - The Courtier's Trifles Bodl. MS. 851 https://www.maryjones.us/ctexts/map1.html ※ ワイルドハント「ヘラル王の狩猟団」伝説について書かれた記事 finger-ring https://www.britishmuseum.org/collection/object/H_OA-10262 ※回復の呪文のルーン文字が刻まれた指輪についての、大英博物館の解説ページ Anglo-Saxon Inscribed Rings https://digital.library.leeds.ac.uk/433/ ※回復の呪文のルーンについて解説されている文献 Handbook of the old-northern runic monuments of Scandinavia and England : Stephens, George, 1813-1895 Anglo-Saxon Inscribed Rings,Elisabeth Okasha ,2003 (スカンジナビアとイングランドの古代北方ルーン文字碑のハンドブック) https://archive.org/details/cu31924026355499 ※回復の呪文のルーンについて解説されている文献その2 中世初期イングランドにおける集会をめぐって,森貴子,愛媛大学教育学部紀要 第61巻 181〜190 2014 アングロ・サクソン期ウスター司教区の訴訟一覧,森貴子,愛媛大学教育学部紀要 第67巻 213~225 2020 中世初期イングランドの紛争解決Fonthill Letter を素材に(1),森貴子,愛媛大学教育学部紀要 第63巻 275~284 2016 中世イングランドにおける決闘裁判,光安徹,成城法学42号,1993
- 作品世界1:ブリオージュ | games
ブリオージュ 中世ヨーロッパ風の異世界ブリオージュ。 豊かな自然と様々な国々、不思議な生き物達が住む世界。この世界のある地方には、パンにうるさい王様が住む王国があり、その北にショコラティエ探偵達が住むチョコ色レンガの街があり、南の穏やかな内海には漁師と不思議な力を持つネコ達が共存する漁師料理店が多い島があります。 人間以外にも、妖精族や人獣族、魔物族等様々な人種と共存しています。また他の世界からの訪問者もしょうっちゅういるとか。 現在までこの世界をテーマにした1ページTRPGが4作品ございます。右のボタンから各ページへ案内いたします。 ブーランジェリは大忙し ショコラティエは名探偵? ペスカトーレはネコの島 サングリアは七つのいろどり 村のはずれの魔女さん家 こちらの背景世界はあくまで参考、フレーバー程度にお考え下さい。どうか、自分の親しんだ世界やキャラに置き換えて遊んでくださいませ。
- 天蕎麦工房最新情報
■読み物一覧 中世ヨーロッパの生活呪文 Coming Soon…
- 第3回「体を癒す呪文詩」 | games
━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 中世ヨーロッパの生活呪文 (増補改訂版) 第3回 「体を癒す呪文詩」 テンプラソバ ━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ◇はじめに おはようございます! 中世ヨーロッパと西洋風ファンタジーが大好きなテンプラソバです。 中世ヨーロッパの生活に密着した呪文についてのコラム第3回を始めます。 今回は、流産やみずぼうそう、こぶなど人の体の様々な症状を癒す「治癒の呪文詩」を紹介します! 紹介する呪文は、中世に書かれた医学書などに記載され現代まで伝わるもので、フィクションではなく実際に使われていた可能性が高い、ある意味「本物」の呪文です! (ドラマの方は、設定も含めて私がフィクションとして書いたものです) ■ドラマパート前回のあらすじ 10世紀、中世イングランドのとある地方「ハマートン」にて、牛泥棒事件が発生した。当時牛は貴重なため、村を挙げて捜索するも見つからず。 領主のエドリック・ハマーは、不思議な力を持つ医師のハードウルフに牛を探す呪文詩を使うよう助力を求めた。 ハードウルフは協力を約束するものの、強力な呪文には災いをもたらす副作用があることを警告する。 村の広場で牛を探し盗人を罰する呪文詩を発動させるハードウルフ。 やがて、容疑者のメイソンが捕まる。 しかし、その日の夜に犯人を拘留していた小屋が火事に! 呪文の副作用なのか?! メイソンは果たして無事なのか?! ■登場人物 エドリック・ハマー:ハマートンの領主 ハードウルフ:ハマートンの司祭にして医師(リーチ) エドマ:エドリックの妻。とても快活で活動的 エグビン:ハマー家の家人で、エドリックが信を置く者 ウィゴット:牛泥棒の被害にあった農場主 メイソン:ウィゴットの従兄、牛泥棒の犯人として拘留中 ダーシー:ウィゴットの牛番。 ダーシーの母:息子の事で取り乱す。息子への情が深い 3人の老婆:ハードウルフの治療所の常連 ◆第5幕「エドマ」 ■横たわる体 メイソンを拘留していた小屋は焼け落ちた。 日が昇る頃に、エドリック達は焼け落ちた小屋の残骸を片付けつつ、メイソンの遺体を探し、それらしき体を見つけた。 うつぶせの体は、焼け跡にあるにしては綺麗だ。 また、エドリックは遺体にどこか不自然さを感じる。 そこで彼は、メイソンの従弟で牛盗難の被害者でもあるウィゴットに尋ねる。 「ウィゴットよ、この者は本当にメイソンだろうか?」 沈痛な面持ちでぼんやり眺めていたウィゴットは、一瞬けげんな顔をしたが、改めて遺体をよく観察しだした。 焼け残った衣服は、確かにメイソンのものにしてはだいぶみすぼらしい。 それに、手には頭巾らしき布切れが握られている。 確かメイソンは頭巾など被らなかったはず。 頭巾をかぶっていたのは…… 「旦那様! この者、わずかに息があるようです! 体も温こうございます!」 ハマー家の家人エグビンがそう言うと体をひっくり返し、仰向けにした。 ウィゴットは、顔を見て思わず「ダーシー!!」と叫ぶ。 メイソンと思われたのは、実は牛番のダーシーだったのだ。 ■ブローチ 「かみさま!! なんてこと! いったいなぜ! なぜこんな! ひどい!!」 突然背後から、女性の泣き叫ぶ声が聞こえた。 振り返るとそこにいたのは、ダーシーの母親だ。 彼女は、ウィゴットが取った頭巾を奪いとり、ダーシーに覆いかぶさって号泣しだした。 「この子が一体何をしたって言うのですか! こんな優しい……ってあれ?」 覆いかぶさってみてまだ体が温かく、わずかだが息をして居る事に気づく母親。 「しっかりおしダーシー!! ほら! 息をして!」 やや取り乱しつつ、彼の頬をはたきだした。 ダーシーの息はとても浅く、血の気が引いた青い顔のままだ。 エグビンが彼の体を起こして、井戸で組んだ水に浸した布切れで顔をぬぐうなどして介抱している。 一方で、エドリックは改めて周囲を見回していた。 ここにメイソンの痕跡は影も形もない。 メイソンは一体どこへ? そしてなぜ牛番がここに? エドリックは考え込む。ふと焼け跡に光るものを見つけて、拾う。 それは銀製の丸いブローチだった。 そこに彫られたレリーフは、筋彫りが目立つよう筋彫りの背景が黒く細工されている。 黒を背景に銀で描かれ物をよく見えるようにする技法だ。 獣のような怪物のような良くわからないが、なんだか見覚えがあるものが彫られている。 日にかざしてよく見ようとするエドリック。 突然、背後から肩を叩かれ「ちょっと、あなた!」と小声で注意された。 そこにいたのは、妻エドマだった。 鮮やかな青いゆるめのチュニックを着た彼女の腹は大きく膨らみ、子を宿していることが一目でわかる。 彼女は、腕組みをしてこう言った。 「まずは、けが人の手当てが先でしょ?」 ■奥方 エドリックがメイソンの行方について考えを巡らせる間に、散歩していたエドマが泣き叫ぶダーシーの母親に気づき、駆けつけてダーシーの手当てを手伝っていたのだった。 一方のエドリックはというと、少し離れた所で何やらブローチを眺めて難しい顔で考えてばかりの様子だったため、呆れて注意したというわけだ。 そんなわけでエドリック達は、ダーシーを荷車にのせ医師(リーチ)の元へと運びだした。 「それより、お前……こんなに動き回って本当に大丈夫なのか?」と、エドリックは一緒に歩く妊娠中の妻を心配する。 エドマは、妊娠してからも朝の散歩を日課としていた。村中を回るらしく、結構な距離を毎日歩いている。 「だって! しっかり足腰鍛えておかないと丈夫な子を産めないって、お医者(リーチ)さまが!」と大きくなったお腹をさすりながら抗議するエドマ。 しかしエドリックは、幼いころの彼女を思い出す。 男たちと混ざって木登りや肝試しを嬉々として一緒にし、誰よりも足が速いほど足腰が丈夫で活発な子だったのだ。 「……うむ、足腰は大事だな」とエドリックはとくに反論せずに同意するのだった。 ◆解説編 ■10世紀の現場検証と裁判 10世紀のイングランドには、現代のような科学的捜査手法もなく巨大な警察機構もありません。 犯罪の証拠として指紋などを収集するのは、はるか後の19世紀以降です。 また、犯罪などで受けた被害は、復讐など自助努力で何とかしないといけない部分もありました。 では、法などなく力だけがものを言った時代だったかというとそうでもありません。 当時は、民族の慣習をベースに「王の法典」と呼ばれる社会秩序維持目的の法律が作成されていました。 裁判は集会などの形で開かれ、訴えや証言、王に任命された臨時調査人達の報告を元に、判決や紛争の調停などがされていました。 裁判では、「主張の陳述」と「根拠の提示」が基本的な立証方法とされていました。 何らかの被害にあった人が、犯人の目星をつけるために証拠となりそうなものを慎重に収集していたことは十分に考えられます。 ■アングロ・サクソンのブローチ 現代のブローチは、宝石や貴金属などで衣服を飾る目的でつけます。 一方で、アングロ・サクソンの時代のブローチは宝飾品としての飾りと、服の留め具を兼ねた器具でした。 5世紀から10世紀にかけて四角、弓、十字架、輪、円盤型、安全ピン型と様々な形状のブローチが流行しました。 中でも円盤形のブローチは人気で、ケント地方を中心に6世紀から盛んに作成されていたようです。 素材として金、銀、銅の他に、七宝焼き、ガラス、ガーネットなどの宝石が使われていました。 また「ニエロ」という、黒地に浮き出た金属光沢を鮮明に見せる技法も使われました ニエロは、銀などの板への彫りこみに、硫黄、銅、銀、鉛を混合した漆黒の物質を流し込む技法です。 9世紀~10世紀頃の独特な模様は「トレウィドル様式」と呼ばれます。動物や人物のレリーフが複雑に絡み合いシンメトリックに配置されています。物語に出てくる謎のブローチは、大英博物館所蔵の「フラーのブローチ」や「金のベルトバックル」をイメージしています。もしどのようなものかお知りになりたい場合は、参考文献のリンクから大英博物館のページにアクセスするか、検索されてみてください。 ■妊娠関連の呪文詩 呪文詩の中には、妊娠に関するものがあります。 なかなか子ができない事や、流産などを解決する呪文であると推測されています。 大きく3種類あり、いずれも妊娠中に実施する呪文と考えられています。 内容は、様々な行為とセットで短い呪文を唱える構成になっています。 例えば、埋葬された男性の墓地を踏みつけながら、「この行為は、憎むべき『遅いお産』の助けになる」と唱える内容です。 または、流れる水に口に含んだ乳を吐き出して、さらに水をすくって飲み「丈夫な子を家に連れて帰りたい」といった内容の呪文を唱え、他人の家で食物を女性から与えてもらい食べるといった内容もあります。 お産に関する悪い要因を遺体や川などに呪文で転移させるという魔術的技法が、いずれの呪文にも共通するようです。 栄養学や医学が未熟な時代、お産も現代以上に大変だったと思われます。 そのため、異教的な内容であっても、初期キリスト教ではある程度許容されてきた可能性があるようです。当時の苦労と願いが垣間見える呪文だと思います。 ◆第6幕「ダーシー」 ■道のり 牛番のダーシーは、家人たちによって荷車に乗せられ教会へと向かっていった。 荷車の後からエドリックとエドマが並んでついていく。 エドリックは、エドマに尋ねる。 「このブローチなんだが、どこかで見覚えないか?」 彼女は、レリーフの奇妙な怪物をしげしげと見ながら 「そうね……確かに見た事あるわね。どこで見たのかしら?」 そういって眉間にしわを寄せ考える。 道端の岩の上でコマドリが激しく甲高いさえずり声をあげている。 どうやら遠くにいるらしいコマドリと鳴き比べをしているようだ。 太陽は徐々に真上に登り、畑では農夫たちが作業の真っ最中だ。 一仕事終えた農家の馬が、文字通り道草を食べている。 首を振って思い出すのをあきらめた彼女は、すぐにこう続ける。 「でも、お父様に見せてみたら? あの方ならきっとわかるわよ」 妻にそう言われると、本当にそんな気がしてくるから不思議だ。 「父の部屋にいってくる。ダーシーが目を覚ましたら使いをやってくれ。聞きたいことがある」 そういってエドリックは、そのまま館にある父の部屋へと向かった。 荷車とエドマ達は、そのままハードウルフがいる治療小屋へと向かった。 ■治療小屋 治療小屋の前には、現役を引退した老人たちが列を作り椅子や柵、樽などに腰掛け談笑していた。 博愛の精神を持つ医師(リーチ)は、この村に赴任した時に、身分の差なく体に不調あればいつでも治療小屋を訪ねるよう村人に宣言した。 以来、体の不調を訴える人、主に現役を引退した老人たちがいつでも小屋の前にたむろするようになったのだ。 小屋の中ではハードウルフの呪文の詠唱が聞こえる。 多くの老人たちの悩みの一つである、体の節々の痛みに対抗する呪文だ。 低く張りがあり優しさのある声は、それだけで老婆達に人気だった。 「出でよ、小さき槍、この中にあるならば。 我シナノキの盾の下に立ちて、輝ける盾の向こうにて、 そこにて、かの猛き女子ら力を現し、 叫び声挙げ槍は放ちたり。 我この槍を送り返さん、 飛び来る矢を彼女らの真正面より」*1 小屋の中から聞こえる馴染みのある呪文に、一人の老婆が以前受けた治療の自慢話をはじめた。 「先生のな、あの呪文はな、痛みによく効くのよ。本当にあの先生の素敵な声はな」 近くにいた友人と思しき老婆がやや茶化す感じで 「先生の声にかかれば、痛みの悪さをする『猛き女子』もあっという間に逃げ出すね!」 もう一人の老婆が続けてこう答える。 「その代わり別の『猛き女子』がくるさね! わしらのような女子がな!!」 そう言って3人は破顔して大声で笑いあう。 そこにエドマとエグビン達がダーシーを乗せた荷車と共にやってくる。 老婆達が我先にとエドマに挨拶してお腹の子の調子や体調を尋ねる。 老婆たちの顔は、しわくちゃの笑顔で自分の娘や孫に接するようにとても親しげだ。 エドマは挨拶を返しつつ、荷車を通すように皆に頼んだ。 小屋の前にたむろしていた人々は速やかに道をあけ、エグビンがダーシーを荷車から降ろすのを手伝う者もいた。 そして、心細そうについてきたダーシーの母親を慰めようと言葉をかける者、抱きしめる者、神に祈る者もいた。 皆口々に言うのだ。 「お医者(リーチ)さまにみせれば、大丈夫だ」と。 ~次回に続く~ *1 呪文詩の訳文は、唐沢一友 (著)アングロ・サクソン文学史:韻文編 (横浜市立大学叢書―シーガルブックス, 東信社, 2004) より引用しています。 ◆解説編 ■突然の痛みへ対抗する呪文詩 現代ではリウマチなどの「突然の痛み」の症状について、当時のイングランドでは超自然的存在が体内に持ち込んだ様々な武器が原因と考えられていたようです。 対抗策として、当時の有名な医学書の一つ「ラクヌンガ」には痛みを抑える軟膏の作成方法と、呪文詩が記載されています。 軟膏は、ナツシロギク、赤いセイヨウイラクサ、オオバコをバターの中で煮て作るよう書かれています。 呪文詩は、痛みの原因となる超自然的存在に直接語りかけ、体内から出ていくような内容になっています。 超自然的存在として様々なものが登場します。 「猛き女子」は、体内に槍を持ち込む北欧神話の戦乙女ヴァルキリーや、大きな災いをもたらす謎の狩猟団「ワイルド・ハント」伝説に出てくる夜空を騒々しく渡る狩猟団メンバーなどと考えられていました。 他にも、6人の鍛冶師が鍛えたナイフや死の槍を、魔女が鉄片を持ち込むという内容がみられ、呪文詩でそれらを追い出すよう訴えかけています。 ■体を癒す様々な呪文詩 体を癒す呪文詩には、他にも体にできたコブに対抗する呪文詩、みずぼうそうを癒す呪文詩、ドワーフに対抗する呪文詩などがあります。 それらの呪文詩の内容は、エルフやドワーフなどアングロ・サクソンの古来の伝説の影響が見られる一方で、呪文の一部に聖人の名前が出たり、最後にアーメンでしめくくるなどキリスト教の影響も強く出ています。 ここで言う「ドワーフ」や「エルフ」は、アングロ・サクソン人のルーツにあるゲルマン神話(北欧神話)に出てくる超自然的存在を意味します。 現在のような、人間が接触可能なヒューマノイドとしてのイメージは、J.R.R.トールキンの小説「指輪物語」以降に広く流布したものと考えられています。 コブに対抗する呪文は、コブ自体に小さくなって消え去るよう訴えます。 かまどの焼けてちいさくなった石炭や、水たまりの水のように小さくなって消えるような内容です。 みずぼうそうを癒す呪文詩の名前は、水エルフとなっています。 おそらく当時は、水棲のエルフが原因と考えられていたのでしょう。 呪文詩では、まずルピナス、ディル、コケモモ、ヨモギなど18種類の薬草をエールと聖水でまぜて薬を作るよう指示があります。 次に、その薬を患部に塗りながら呪文を唱えるように書いてあります。 内容は、いかに素晴らしい薬か「最高の戦友」と表現し、この薬がどのように症状を抑え治していくかを説明する内容です。 ドワーフに対抗する呪文詩は、キリスト教の影響が一層色濃く見えます。 この呪文詩では、睡眠中の発作や痙攣、悪夢がドワーフにとりつかれたことが原因と考え対抗する内容となっています。 最初に「七人の眠り聖人」というキリスト教の伝説的な聖人の名前を7枚の薄く焼いたパンに書くよう指示があります。 「七人の眠り聖人」とは、岩の中に閉じ込められ数百年後に目覚めたという伝説を持っています。 眠りについての何らかの効力を期待して、呪文詩に登場するのかもしれません。 その後、呪文により召喚された蜘蛛が耳から入りドワーフを体内から排除して病を癒すといった内容となっています。 超自然的存在への対抗方法にも様々な方法があるようですね。 ◇次回予告 ハードウルフによって、いよいよ「九つの薬草の呪文詩」の力が発動する! 次々と投入される薬草!やがて現れる古代の神々の力! 昏睡中のダーシーは治療されるか?! 中世ヨーロッパの生活呪文 第4回「九つの薬草の呪文詩」 ご期待ください! ◆参考文献 唐沢一友(著)アングロ・サクソン文学史:韻文編 (横浜市立大学叢書―シーガルブックス, 東信社, 2004年) 吉見昭徳(著)古英語詩を読む ~ルーン詩からベーオウルフへ~(春風社,2008年) ウェンディ・デイヴィス/編 鶴島博和/監訳 オックスフォード ブリテン諸島の歴史 3 ヴァイキングからノルマン人へ(慶應義塾大学出版会,2015年) Merriam-Webster Encyclopædia Britannica 1911.Vol28.P523."WERMUND" (カレル・フェリックス・フライエ)Karel Felix Fraaije, Magical Verse from Early Medieval England: The Metrical Charms in Context, English Department University College London,2021,Doctoral thesis (Ph.D) 森貴子(著)アングロ・サクソン期ウスター司教区の訴訟一覧(愛媛大学教育学部紀要,第67巻,213~225ページ,2020年) 森貴子(著)中世初期イングランドの紛争解決―Fonthill Letter を素材に(1)―(愛媛大学教育学部紀要,第63巻,275〜284ページ,2016年) Decoding Anglo-Saxon art(アングロサクソン美術の解読) https://www.britishmuseum.org/blog/decoding-anglo-saxon-art The Fuller Brooch(フラーのブローチ) https://www.britishmuseum.org/collection/object/H_1952-0404-1 belt-buckle (金のベルトバックル) https://www.britishmuseum.org/collection/object/H_1939-1010-1
- 村づくりTRPG | games
中世風の森の奥で数家族が森を開拓し村を作り始めてます… 木を切り、畑を耕し、水車をたて徐々に発展する村。 不思議な訪問者とのちょっとした事件を通して魔法の品をもらったり、村を襲う大災害に皆で対抗したりしながら、村の年代記を紡いでいきましょう。 ◆プレイ人数 ゲームマスター1名 プレイヤー1~4名 ◆必要な物 六面のサイコロ2つ、大きな紙、メモ用紙 ◆ゲームタイプ 協同・創造型 ◆推定所要時間 30分~2時間(オフライン想定) 村づくりTRPG 画像クリックでダウンロード
- ペスカトーレはネコの島ダウンロードコンテンツ
ペスカトーレはネコの島 ダウンロードコンテンツ ◆ オンラインセッション用マップ 朝、昼、夜、各シーン用に用意しました。 シーンにあわせマップを切り替えてお使い下さい。サマリーが不要であれば朝のマップだけでも十分にセッション可能です。 *画像クリックでフルサイズダウンロード 朝マップ 昼マップ 夜マップ
- 天蕎麦工房-TENSOBA WORKSHOP
更新情報 2016/06/06 開設 2016/06/17 コンテンツ更新 2016/06/25 1ページTRPG温泉TRPG追加 2018/10/28 1ページTRPGコンテスト出品作品情報追加
- プレイエイド:ショコラティエは名探偵? | games
ショコラティエは名探偵 ゲームマスタープレイエイド ◆依頼人と思い人の設定 ゲームの準備の依頼人と思い人の設定は、参加者のリクエストを聞いたり相談しながら決めても楽しく円滑に遊べると思います。 ◆好み調査フェイズ 好み調査フェイズは情景描写、行動描写を必要とするので少々難しいかもしれません。 状況の詳しい説明が浮かばない場合、サイコロで出た状況を読み上げそのままサイコロをふらせてヒントワードを獲得したか判定してゲームを進めても大丈夫です。 ◆ヒントワード:甘さレベルの伝え方 甘口ならば別の甘いものが好き(例えばマシュマロ、コーヒーに砂糖山盛り)。 辛口ならば苦いもの好き(例えばコーヒーはブラック、ゴーヤ・ピーマン生噛り)。